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高槻と南方2[side 高槻]

【side 高槻】 今、俺達は委員長のクルーザーで千尋のいる島に向かっている。 千尋の父親に会った時には、きちんと謝罪しようと思っていた。 俺がもっと、しっかり守っていれば千尋を危険な目には合わせなかった。 「明日に備えて俺は寝るぞ。朝早くに着く予定だから、お前らも早く寝ろよ。」 日も暮れてきたので休むようにと、委員長が大きく伸びをしてから立ち上がった。 イタリア製のクルーザーにはベッドルームはちょうど五つある。 「僕は滾っているので眠れそうにないよ。鳴海さんと朝まで語りあ……」 「園ちゃん。行くよ」 美村が園田を引きずるように連れて行った。二人は同じベッドルームを使う。 「それでは私も……」 鳴海もサロンから出て行き、俺と南方の二人だけになった。 「君と少し話がしたいんだけど……」 南方の言葉に頷いた。 俺もこいつとは一度話がしたかったからな。 「俺もだ」 少しの沈黙の後、俺の方から聞いた。 「千尋とはどうゆう関係なんだ?」 クラスも学年も違う。 こいつは生徒会のメンバーだ。千尋は生徒会連中を避けていたはずなのに。 千尋はこいつのことをいい奴だと言っていた。 「早朝、一緒に散歩していた」 「一緒に?」 ……いつの間に。 一度、千尋を泣かせてしまった時から朝のウォーキングには出ていなかったはずだ。 俺に秘密で会っていたのか? 「ひとりで出歩くなと言ったのに……」 眉根を寄せた俺の顔を見て、南方が慌てたように付け足した。 「俺が弱いから、千尋は心配して会ってくれていたんだ。ずっと部屋に引きこもっていた俺を千尋が変えてくれた」 そして、少し言いにくそうに続けた。 「高槻。君は風紀委員として実力行使で素行の悪い生徒を取り締まってるんでしょう。千尋にも……そうなのか?」 その言葉に俺はカッとした。 「千尋を傷付けるような真似はしない! 俺は千尋を守りたいだけだ! ……でも……守れなかった。千尋が発作を起こしてしまうような目に合わせてしまった」 「君のせいじゃない。平野君の手紙を読んで、千尋はあの場所に行ったんだ。あの子は優しいから」 南方も切なげな声で言った。 そうだ。千尋は優しい。 南方の事を委員長は「コミュ障」だと言っている。 こいつはずっと部屋に引きこもっていた。 俺もそれが良い事だとは思わない。 だから、千尋は心配したのだろう。千尋は誰に対しても優しいから。 俺が泣かせてしまった時も、委員長に煽られて無理矢理キスしてしまった時も 千尋は許してくれた。 「……悪かった」 「え?」 「あの時、コンビニを出たところでお前と会った時。千尋の言葉を聞かずにお前に近付くなと威嚇した。すまなかった」 「気にしてないよ」 南方はふわりと笑った。 「でも、ありがとう」 「お前が生徒会の人間だから、千尋に近付いてほしくなかった。でも千尋は生徒会だろうが、風紀だろうが、気にしないだろうな」 「そうだね」 千尋はそんなこと気にしない。皆が見て見ぬふりをしていた平野の事も見捨てなかった。 「千尋に会いたい」 千尋が入院した日から一度も会っていない。毎日一緒にいたのに。 もう何年も千尋に会えていないように感じる。 会って千尋に謝りたかった。 「……そうだね」 南方も小さな声で呟いた。

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