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ハロウィン当日1
ハロウィン当日。
「か……加護さん。これ……!?」
「可愛いでしょ! 内田ちゃんと選んだのよ」
温温庵のバックヤードで、鉄平は加護に渡された衣装を手に硬直していた。
「鉄平ちゃんに似合うと思って~」
加護の隣の内田がニコニコしながら言う。
内田は奥田とコンビのOL常連客だ。
なぜ、客である内田が店のバックヤードにいるのかというと……
「お化粧は私に任せてね。さ、着替えて! 鉄平ちゃん」
今日の内田はヘアメイク要員なのだ。
ちなみに奥田は残業アリなので、後から店に来る。
加護はすでにコスプレ衣装に着替えており、メイクもばっちりだ。
峰不◯子のような黒のピッタリしたボディスーツがモデル体型の加護に似合っていた。
オレンジのウィッグを被り、セクシーな化粧を施していた。
「か、加護さん。その格好は?」
「ブラッ◯ウィドウよ。アベン◯ャーズのスカーレット・◯ハンソン」
「加護ちゃん、セクシー!」
「内田ちゃんも可愛い~♪」
内田は「アナと雪の◯王」のエル◯のコスプレをしていた。
店が終わった後、その格好のままクラブイベントへ繰り出すらしい。
はしゃぐ二人を見ながら、鉄平は逃げたいと思った。
───ここ、居酒屋でしょ!? なんでこんなコスプレなの!?
鉄平はせいぜい顔にヒゲを描くとか、着ぐるみパジャマでも着る程度だと思っていたのだ。
「さ、着替えて」
加護と内田が催促する。その満面の笑みに鉄平は覚悟を決めた。
「やっぱり! 地味顔だから、メイクが映えると思ったのよ~」
「内田ちゃん。さすがだわ」
着替えを終えた鉄平は、内田によってマスカラやチークやら、化粧を施されていた。
「……」
───どうしよう。帰りたい……
その時、ロッカールームのドアをバァン! と壊れる勢いで開いて、高杉が入ってきた。
「お前ら! いつまでくっちゃべってんだ! さっさと仕事しねぇか!!」
高杉はいつものTシャツ姿ではなく、濃紺の着流しに襷の出で立ちだった。
加護が「高杉様って感じでしょ!」と、息を荒げて持ってきたのだ。
「「高杉さま」」
加護&内田が目をキラキラさせて嬉しそうに高杉を見た。
「だから、とっとと……!?」
言いかけて高杉が固まった。目線の先には鉄平がいる。
鉄平は女子高生のセーラー服を着ていた。
膝上の紺のミニスカート。白のハイソックスに黒いローファー。
赤いタイをふんわりとリボンのように結んでいる。
黒髪ストレートの少し肩にかかる長さのウィッグを被り、薄くメイクを施されていた。
黒い髪が鉄平の緑と黄色の混じった大きな瞳を映えさせている。
マスカラで普段より長い睫毛が、瞬きする度にパサパサと羽音をたてるようで可愛かった。
薄い桜色のグロスを塗られた唇を恥ずかしげに噛み締め、頬を染めて上目遣いで高杉を見ていた。
どこからどう見ても、清純そうな美少女だった。
しかも恥じらう姿からは、そこはかとなく色気が滲み出ている。
「お……え……う……」
「ほら! 鉄平ちゃん。高杉さんも見とれちゃってるわよ」
「高杉さま。僕のブラック・ウィ◯ドウにはスルーなわけ!?」
加護が拗ねたように言った。
ハッと我に返った高杉は「さ、さっさと仕事しろ……」とだけ言って、ロッカールームを出て行った。
「なんで、俺、女子高生……?」
「萌えよ。鉄平ちゃんは萌えキャラなのよ。僕はセクシー系」
「志狼さまもきっと萌えちゃうわよ~。志狼さまもコスプレしてくれないかな~」
「志狼さま、ウルヴァ◯ンとか似合いそう」
「あ~、ぜひ上は裸でお願いしたいわ」
はしゃぐ二人に「しろうは今日は来ないよ」と、鉄平が言った。
「「どうゆうこと!?」」
内田&加護が同時に叫んだ。
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