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嫉妬する狼
店の客達は「よくやった!」「スッキリしたぞ~」「高杉さま、カッコいい!」などと口々に言って、盛り上がっていた。
「志狼さま! すっごく素敵……」
加護が店の入り口に立つ志狼に言いかけて固まった。
ズカズカと志狼が大股で歩き、高杉に頭を撫でられていた鉄平の腕をグイッと引いた。
「わあ!」
「勝手に触るな!」
狼の威嚇そのもので、高杉に言い放つ。高杉は眉を上げて
「へぇ。お前の許可がありゃあ触り放題なのかよ」
と、嫌味ったらしく言った。
「許可する訳ねぇだろうが。こいつは俺のだ!」
鉄平を挟んで睨み合う高杉と志狼を、内田がこっそり写メった。
「えっ!? うわぁ……しろお!」
志狼は鉄平を担ぎ上げた。鉄平は慌てて、捲れてしまいそうなスカートの端を手で押さえた。
「こいつは連れて帰る。二度と触るんじゃねえ」
再び高杉に低く吠えて、志狼が大股で店を出て行った。
「ガキが……」
高杉が独りごちた。
竹田が「お騒がせして申し訳ありません」と客に頭を下げるが、
「あのセクハラ一見客ウザかったし」
「面白かったよ」
「昼ドラみたいだった!」
「萌えた~」
常連客は気にしてない風だった。竹田はホッとして、少し鉄平を心配した。
その後ろで、加護と内田が写メの撮れ具合を顔を寄せ合いチェックしながら
「朝まで泣かされるに千円」
「わたしも」
と、賭けにならない賭けをしていたのだった。
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