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さまよう猫2
「!?」
ぐいっと肩を引かれて、鉄平は驚いて立ち止まった。
振り返れば、綺麗な顔立ちの18~9歳くらいの二人の青年だ。
「あんた、さっき志狼といた子?」
「えっ」
「違うでしょ。こんな平凡顔じゃなかったよ」
「さっきは女装してたけど、間違いない。この瞳の色、珍しいもの」
二人の青年はさっきの路地裏にいた男娼だった。マジマジと鉄平の瞳を覗き込んできたので、鉄平は居心地悪く感じて俯いた。
「なに泣いてんの?」
「ああ、志狼に捨てられちゃった?」
意地の悪い声音で言われて、鉄平がびくりと肩を揺らした。
「だよねぇ。あんたみたいな貧相なの。志狼の好みじゃないし」
「満足させられなかったんでしょ。志狼って絶倫だし、スゴイしね」
綺麗な顔をした青年達にニヤニヤと笑いながら嫌味を言われて、鉄平はますます惨めな気持ちになる。
彼らから逃げようと歩き出したが、また腕を掴まれた。
「はなしてっ」
「志狼はどこ?」
「あんたじゃ満足できなかったから放り出されたんでしょ? あとは僕達に任せなよ」
───嫌だ! 志狼が他の人を抱くなんて……ッ!
「なーにサボってんだ!」
後ろから男がポコポコっと男娼達の頭を軽く叩いた。さっきの厳つい顔の男だ。
「ちょっと! 叩かないでよ!」
「うるせえ! さっさと持ち場へ戻れ!」
ブツブツ文句を言いながら、男娼達は戻っていった。
「……あ」
男は鉄平の顔を覗き込んで、
「さっきの志狼さんの連れだよね。ははぁ、化粧ってのはスゴイな」
しみじみと言った。助けてもらって感謝するが、男の言葉に惨めな気持ちになった鉄平は唇を噛んだ。
「や! あっ、馬鹿にしたとか、そうゆうんじゃないから! さっきは女の子にしか見えなかったから……ッ!?」
鉄平の大きな瞳から、再びポロポロと涙が溢れ始めた。
「ど、どうしたんだい? 志狼さんは?」
鉄平はひくひく泣きながら、首を左右に振った。
参ったな、と呟いて男はポリポリ頭を掻いた。
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