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さまよう猫3
男に連れられて、鉄平はファーストフードの店に入った。
温かいカフェオレを目の前に置かれて、おずおずと口にする。
男は名を佐和(さわ)という。180超えの長身にゴツい体躯で厳つい顔だが、まだ25歳だ。蛇堂組の下っ端で、この辺りの男娼達を取り仕切っている。
「なにかあったのかい?」
佐和は見た目は厳ついが、子猫や子犬、小動物に弱かった。フランダースの犬の再放送を見る度に泣いてしまうのだ。
鉄平の子猫のような仕草に少々参っていた。
それに、ただならぬ様子も気になった。先程まで志狼に抱かれて、甘く泣かされていたとは思えない。
「関係ない人間に話すと気が楽になるぜ」
厳つい顔に似合わない人懐っこい笑顔で、鉄平に優しく言った。
鉄平はポツリポツリと話し始めた。
「ははぁ、志狼さんがねぇ」
鉄平は志狼に男娼代わりにされていると思い込んでいるようだが、佐和は志狼が本気で鉄平に入れ込んでいるのだと思った。
「あ~、鉄平君。ちょっと勘違いしてると思うよ。志狼さんはうちの組長と級友でね」
「たつださんのこと?」
「組長のこと知ってるのかい?」
「前に社長室でケーキもらって」
「ええ!?」
───驚いた。志狼さんだけでなく、組長にまで気に入られてんのか。
佐和にとって竜蛇は雲の上のお人だ。そのお方にケーキをもらったとは……
佐和はマジマジと鉄平を見た。
仕事柄、色気のある美しい顔立ちの男娼は見慣れている。高級男娼にもなれば、芸能人以上に魅力的な外見の者もいる。
目の前の鉄平は華奢で平凡な顔立ちだった。瞳の色は珍しく、目が大きくて可愛らしいが、派手さは無い。
「……確かに志狼さんは、うちの男娼達と、まぁ……そういった関係だったけど。もうずっとご無沙汰で来てないよ」
鉄平が傷付いた顔をしたが、佐和は続けた。
「いっつも志狼さんはホテルでコトを済ましてた。家に男娼を連れ帰ったことなんか無いよ」
「でも……」
「俺が君の顔を見た時、志狼さんは怒った。あんなの初めてだよ。志狼さんはあと腐れなく遊ぶお人だったし、一人とだけ一緒にいるなんて初めてだ。ここ数ヶ月、君としかセックスしてないんだろ」
佐和の言葉に鉄平は真っ赤になった。
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