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さまよう猫4

「組長が君を社長室に入れたのだって、君を認めたってことじゃねえのかな。組長だって志狼さんのセックス相手に興味なんかねぇお人のはずだし」 「……」 「鉄平君は志狼さんが好きなのかい?」 ───好き。しろうが。 その言葉に胸がきゅっと締め付けられた。最初は強引に抱かれた。どこにも行くところがなくて、流されるように志狼の家に住み着いた。 でも今は……志狼と一緒にいるのが当たり前になっている。離れるなんて考えられない。 「俺、しろうに好きって、言ったことない。しろうは、俺のこと好きって言ってくれたのに……」 「……志狼さんはうちの男娼の誰にも好きなんて言ったことないよ」 またポロっと涙を零した鉄平の頭をポンポンと撫でた。 「ちゃんと言いな。すれ違ってちゃ駄目だよ」 「……うん」 鉄平は目元をゴシゴシと手の甲で擦って、顔を上げた。 「ありがとう。佐和さん」 泣き濡れた瞳でニッコリと笑った。打算のない、無垢な笑顔だった。 ああ、これはたまらないなと、佐和は思った。 自分のように闇稼業の人間には、こんなに純粋な笑顔を向けられることはない。 ヤクザと知っていて、素直に礼を言う鉄平は素直で可愛らしい。 志狼も組長も、鉄平を気に入るのが分かった気がした。

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