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〃
Side遥
薫「…………まずい…………」
そう苦い顔をしてつぶやく彼に苦笑が漏れる
遥「そりゃね、食べるものじゃないから」
そういうと、彼は何か言いたげに、こちらを見上げてきた
遥「なに?」
薫「…………ごめん……」
遥「………………は?」
今にも泣きそうな顔をして…………謝られた……
嘘でしょ…………いつも自分がどれだけ悪くても謝らない彼が…………謝ってる…………
遥「っふふ…………どうしたのさ」
薫「う、うるせぇ……笑うなよ…………」
遥「どうしたの、薫ちゃん笑」
薫「薫ちゃん言うな!
だって………………」
遥「……だって?」
うるうると潤んだ瞳をこちらに向け、もじもじとしている
ま、どうせいつも不味いもの飲ませてごめん
とかだろうけどさ
そんなことも言いにくそうにしている彼が、可愛くて仕方ない
いや、なんも可愛くないんだよ?見た目はね
整った顔してるけど、美人の部類だし
可愛いような小さな子じゃないけど
なんだろう…………好きだから……かな?
可愛い…………というか、愛おしい
いつの間に、こんなに絆されたんだと驚いていると同時に、とても嬉しくなる
自分は冷たい人間だと思っていた
誰も好きになったことがなかったから
そんな僕に、誰も近づいてこなかったし
僕も近づこうなんて思わなかった
けれど、薫だけは違った
どれだけ邪険にしたって、しつこく付きまとってきて…………彼にこんなに愛されて、僕にもとうとう人を思う心ができたんだと思うと、無性に目の前の人間が愛おしくなった
遥「んー…………ちゅっ」
薫「んむ?!…………な、なにすんだよ!?」
遥「んふふ、キスしたくなっちゃった」
薫「ば、バカ…………なんでだよ…………」
これだけで、顔を赤くする彼…………何度もキスはしているのに、まだしていないこの先に進んだらどうなるんだろう…………
意外に淫乱になったりするのだろうか…………
それとも、いつまでもウブ…………?
そんな妄想をしていたら、よく分からないけど抱きたくなってきた
遥「………………だきたい……」
薫「え?なんて?」
小さく呟いた言葉は、当然届くことはなくて
もし届いていたら、どんな反応をするのか、気になったけど…………ま、また今度でいいかな
遥「んー?なんでもないよ
ね、薫、もっとキス、しよっか」
薫「…………っ、す、すれば?」
遥「可愛くないなぁ」
薫「…………可愛いやつと付き合えば?」
遥「くくっ、顔、泣きそうだよ?」
薫「うるさい……っ、ばかぁ…………」
こんな、ボクが他人と付き合う想像をしただけで泣きだしそうな君を…………手放すわけないじゃないか………………
まぁ、こんなことぜったい言ってあげないけど
遥「ほら、可愛い薫ちゃん
こっち向いて」
薫「かわいくな…………んむぅ……んッ」
遥「ちゅ……ンッ…………んふふ…………」
まぁでも…………エッチはまだ先でいいかな………
こんなに顔を赤くしちゃうなら、慣れるまでいくらでも待つよ?……僕待てる子だから
キスをしながら、そんなことを考えていたなんて、薫は全く知らないだろうな……と思いながらキスに夢中になる僕だった……………
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