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心の声ver遥

Side遥 「遥の……はるかのばかっ!」 「んなっ、はぁ!?おい、薫!」 「ばーか!!」 バタン!と閉まるドアを見つめることしかできない自分に腹が立つ ……また喧嘩をしてしまった………… きっかけは些細なことだった ふぅ…………と深く溜息をつき、ソファに座り天井を見上げる 事件は今日のデートの帰り道におきた ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『あのぉ〜おにいさん?』 『…………は?僕?』 『はい!えっとぉ、デートしませんか?』 原因は香水臭い頭の悪そうな女に声をかけられたことだ その女は僕に媚びるように声をかけると腕を絡め、邪魔だろうなと思うくらい大きな胸を押し当てた あぁ、またナンパかよ……と心の中で愚痴を零しながらスルッとその腕を優しく剥がす 「すいません……恋人いるので」 と答えるが、聞く耳持たず、と言った様子のその女はまた腕を絡めてくる 「えぇ〜いいじゃぁん 今日だけ〜 私とぉ浮気しよ?ね?」 コテンと首を傾げる仕草をした女 ふとその仕草をみて、それをよくする可愛い友人を思い出す (……鈴の方が100億倍可愛いし…………) その仕草をよくする友人の、首を傾ける仕草を脳内で再生した (うん、やっぱり鈴の方が可愛い) 改めて鈴の可愛さを知り、心が穏やかになり ふふっ、と笑ってしまう そんな様子の僕を見て、あと一押し!と思ったのか、お願いお願い!と連呼し始めた女を見て哀れみの目を向けている すると、トイレに行っていた薫が帰ってきた ……………………とても不機嫌そうな顔で……………… 「じゃ、僕もう行くから」 「えぇ〜いいじゃぁん! 1時間だけでもいいからぁ「あのっ!」 あれ、珍しい…………と僕は間に割り込んできた恋人を見つめる いつもは俺がこっぴどく振るのを見ているか、またか……という顔で近くのお店に行ってしまうかの2択なのに…………と不思議に思いながら薫を見つめる ずんずんと俺たちに近づいてきた薫は腕をつかみ、ブンッと音がなりそうな程勢いよく女の腕を振りほどく 「いたっ!」と女が腕を摩っているのも気にせずに僕の腕を掴みモールを出ていった いつもなら例え僕のナンパ相手でも相手の痛がることをせず、振られるところを眺めているあの薫が………… 今日は不機嫌そうに僕らの間に入り、相手を少し痛めつけていた 珍しいこともあるもんだなぁ、と楽観視してた僕だが まさかその二時間後、こんなに焦ることになるとは思ってもみなかった

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