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薫が家を出ていった
喧嘩なんていつもしてるし、家を出てかれることだって今まで何回もある
けれど…………こんなに長い家では久しぶりだった
時刻は夜の九時…………
薫が出ていってから4時間たった
「…………さすがに長いよね……」
心配になった僕は、薫がよく逃げ込む晴也へ電話をかける
プルル……プルル…………とコール音がなる
全然出る様子のない晴也に不安が込上げる
もし、晴也の元にいなかったら?
薫が僕に愛想をつかしていたら……?
じわりじわりと溢れる不安に、胸が押しつぶされそうになる
早く、早く出て…………とケータイを握りしめると
向こうから呑気な声が聞こえてきた
『はいはい、もしもし〜?』
「晴也!よかった…………」
その呑気な晴也の声が聞こえただけで漏れた安堵の溜息に、僕自身びっくりしてしまう
薫が数時間いなくなっただけで、こんなに焦るなんて…………
どれだけ薫に依存してしまっているんだろう……
とショックを受けて黙っていると、向こうから心配そうな声が聞こえてきた
『…………?遥、どうした』
「あ、えっと……薫そっちに行ってない?」
『あ?薫?
…………きてないけど…………』
嘘でしょ…………晴也の所に行ってない?
だとしたら…………どこに………………
と彼のいきそうなところを想像する
一つだけ、思い当たる所があった…………
…………朱雨…………
人見知りの薫がいる所なんて、晴也以外のところだとそこしか思い当たらなかった
嫌な予感しかしない………
朱雨は
されて嫌なことをされたら、同じことで返せ
というやつだ
例えば、浮気をされて嫌だったなら浮気をし返せ…………とか…………
だとしたら、今回浮気を疑われている僕は、浮気をし返されるのだろうか…………
だから、帰りが遅いのか?
とどんどん焦りが募る………………
アホな薫のことだ
朱雨の言うこと全てを間に受けて、実行しかねない…………
それだけは嫌だ………………
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