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牛丼とバカ

「かーなめちゃん!昼飯食った?」 「…まだ」 「なら牛丼行こうぜ、牛丼!」 広いキャンパスをゆっくり歩いていれば千石に肩を抱かれる。 このあとはもう講義も無いし、バイトまでは時間もある。 牛丼か。 ちょっと濃いけど、まぁいいか。 「紅生姜たっぷり乗せたの食いたくてさ~」 ニコニコとそう言うと肩を抱いたまま歩こうとする。 牛丼は食っても良いが、この腕がうぜぇ。 「…暑苦しい。」 ぐいっと体を押して離れるように促せば、「えー、ひどーい」とシナを作る。 「………」 「そんな冷めた目で見ないで(T_T)」 冷めた目で見たつもりは無いんだが… 「要ちゃんはほんとクールビューティーだなぁ。」 知るか。 なんだよ、クールビューティーって。 受け答えも面倒なので心の中で突っ込む。 「めげないもん!」とか何とか喚く千石を無視してキャンパスを歩いていけば、 「ぎゃはははは!バッカだろお前ら!!」 聞き慣れた声。 声のほうに視線を向ければ、バカはそっちだろ的な笑い方をしている光の姿。 「おー!要!聞いてよ、アイツらさぁ…」 ゲラゲラ笑いながら背中にのし掛かってくる光の体温もバカほど暑い(仕方ない、バカだから)。 「…はいはい。」 肩口に顎を乗せる光の頭を撫でてやれば「うししし…!」と笑っている。 「なんか俺との扱いの差が切ない!俺も撫でてよ!要ちゃん!」 「ああ゛?暑苦しい、触んな」 正面から抱き着こうとする千石の腹を足で遮れば「ほら~!o(T□T)o」と尚も喚かれる。 「うっぜぇ。牛丼止めんぞ」 「それは嫌!」 「え、何、牛丼行くの?(゜▽゜*)」 「ん、光も行くか?」 「行く!」 背中に張り付いたまま「牛丼~牛丼~♪」と歌うバカにクスッと笑いが溢れる。 バカはバカだけど、コイツは可愛いバカだ。 「大盛に紅生姜山盛り、生卵3つ乗っせよ~♪」 「…………」 「ひかるん、それはキモいよΣ(´□`;)」 ……胃袋と舌もバカだけどな。

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