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自然

カリカリカリカリ…… シャーペンが紙の上を走る音が緊張感漂う室内に広がる。 ヴー…と音を響かせながら流れる暖かい風が、凝り固まった空気に波紋を作っていく。 「あと10分」 監督官の低い声、それに呼応するように複数のシャーペンの音が速まった。 フー… 見直しも終わり、大きく息を吐き出してシャーペンをプリントの上に転がす。 視界の端に同じようにタメ息を吐く光の姿を捉える。 クッソ寒い日に行われるセンター試験。 時間に余裕をもって出掛ければ、ご多分に漏れず降った雪で盛大に転んだ。 幸先の悪さに大きく舌打ちをすれば「先に悪いこと起きたから、これで今日は良いことしか起きないね。」と光に手を引っ張られた。 ニコニコと笑うその表情に肩の力が抜けた。 問題は解けた。 自信はないが、やりきった感はある。 同じ大学を志望した光は余裕で受かると思う。 バカのクセに成績だけは良いから。 『俺ね、要と同じところにしたんだ~』 『はぁ?バカか、なんでランク落としてんだよ!』 悠長に間延びした声で告げられた言葉に思わず怒鳴ったのが、ついこの間のように思える。 『だって一緒にいるのが一番自然だなって思ったからねぇ。怒ってもダメだよ、もう決めたから。』 幼稚園から高校まで離れたことなんかなかった。 側にいるのが当たり前で、その場の空気でセックスまでしちゃうような仲で。 嬉しくないと言えば嘘になると思った。 『……………』 『要?』 『……分かった。なら俺が志望校変える。』 『え?』 『だから、お前はそのままでいろ。その代わり責任もって勉強教えろ。』 『え、大丈夫なの?』 『うっせぇ、知るか!浪人したらてめぇのせいだかんな!このバカが!!』 『えええΣ(Д゚;/)/』 そう言って中指立てて睨み付ける一方で覚悟を決めた。 「解けた?」 「ん」 「いけそう?」 「さぁ?…何とかなってんじゃねぇの?」 「そか!」 「……おい」 「ん?」 「…サンキューな。」 「何が??」 「…………別に。あ、そこ滑る…」 「どわぁ!!」 「大丈夫か?」 「痛い、冷たい(´;ω;`)」 「…おら、手」 「っと、」 雪解け水で濡れた手を引っ張る。 朝とは逆の立場にクスクス笑いが溢れたー。

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