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第5話
レジに隣合って立つと、あいつはにこにこ話しかけてくる。
「なあ今日、一緒に帰ろ」
「なんでお前と帰らなあかんねん」
「ちょっと寄り道していこ? とんこつラーメン食べたいねん」
こいつがこういう誘いをするときは何か話をしたいときや。
どうせ男の話やろ。
こいつがゲイやて知ったんはバイトに来てすぐのこと。
それから俺が知るだけでも10人以上の男と付き合うて、どれも長続きせんですぐに別れる。
かわいい顔しとるからいくらでも男は寄ってくるようやけど、だめんず好きのこいつが選ぶんは見た目だけの中身カスカス男ばかり。
「そんなもん彼氏と行けや」
「…振られたもん」
拗ねた口調の上目使い。
ちっ、むかつくな。
凶悪にかわいい。
自覚があるからこいつ余計に始末が悪い。
「そらなによりやな」
「なんで?」
「相手の男は見る目があったっちゅーことや」
「ひどいやん、落ち込んでんのにそんなこと言う?」
そんなふくれっ面が似合う20歳の男てどうやねん。
見る目がないんは俺のほうやと思いながら、ちょうど入ってきた客に目線をやった。
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