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序章・5

 けれども、ある種族だけにはその茨の効果はなかった。  その種族の名は、悪魔。  彼らは闇を好み、天界と対になる存在。  彼らは彼らの世界、暗黒界(ダーケティア)以外のすべてさえも手中に治めんと策略している邪な者だった。  天界より生まれし禁忌の子を知った悪魔は、意図も容易く冷たい牢獄から奪い取ることに成功した。  誰よりも早く悪魔に忌み子を連れ去られたことを知った天界神ウラノスは、天使たちを使い、居場所を探させた。  一日が経ち、一週間が経ち、一年が経った。  しかし忌み子の姿はどこにも見当たらない。  困り果てたウラノスは、頼みの綱として光の魔法使いであるカラムを自らの神殿に呼び寄せた。  茨の塔の中に残っていた邪な魔力を感じた彼は窪んだ目を細め、皺だらけの手で真っ白に蓄えた顎髭(あごひげ)を撫でる。  ふたつにねじ曲げた太い木の枝の杖を右の手に持ち、腰を折り曲げて前を見据えた。 「闇の力を感じまする」 「さもあろう。さて、カラム。汝、時の旅人よ。お主ならあの子をどこへ隠すかね?」

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