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第一章・遊び人と堅物。

 ジルグの巨体が大地に倒れる。耳障りな断末魔の声を上げたきり、彼らはもう二度と起き上がることはなかった。  ほどなくして周囲に響いていた人々の悲鳴が消えた。それはエルフたちの活躍により静けさが再び戻った瞬間でもあった。  ――彼らの明るい歌声が星空の下に流れる。  静寂が宿る中、銀の鎧を脱いだ兵士たちはテントを連ねたその前に火を囲む。勝利の美酒に酔いしれていた。  キアランはその中で薄い唇を閉ざし、目前で煌々と燃える炎を見つめていた。 「キアラン、彼が貴方に話があるそうだよ」  青年がグラス片手に彼の隣に立つと口火を切った。彼はキアランの親衛隊を担っている、キアランがもっとも信頼を置いている兵士だ。  彼の後ろには村の長老だろう。丸まった背を撫でながら、キアランに恭しく一礼した。 「ジュリウス。珍しいな、お前が女を連れていないとは……」

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