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第一章・民の声。

 キアランは彼と一緒にいる人物が女性ではないことに気づき、薄い唇を歪ませて皮肉を含んだ笑みを浮かべた。  なにせジュリウスという男は自分が人目を引く美貌を持っていることを十二分に理解している。長身で引き締まったたくましい身体とオリーブ色のうねった髪。輝く目を武器に、女性を口説くことこそが彼の生き甲斐だった。 「俺にしてみれば、フェイニア国でもかなり美形とも言われているその容姿でニンフたちと戯れたことのない貴方の気が知れないね」  ジュリウスは首を左右に振って堅物な王子に言い返した。ジュリウスにとって、女性を口説く行為は教会で祈るのと同じくらい神聖な行為なのだ。  だがこのジュリウス。少々口が軽いのは玉に瑕ではあるが剣の腕はフェイニア国ではキアランに次ぐ二番目の強者である。  キアランは肩を窄め、最早彼に付ける薬は何もないと諦め、長老と向き合う。 「私に何か話したいことがおありのようですね」  キアランは長老に(たず)ねた。 「私たちはこの村よりもさらに東にある大きな街に住んでいた者です。実は、先の村を襲ったジルグとは別の魔族から逃げてきたのです。奴らはジルグとは比べものにならないほど凶悪で、たった一夜にして街を滅ぼしました。私の娘や婿も奴らの手にかかりました。私たちは奴らの目をくらまし、地下からなんとか逃げ遂せることができましたが、しかしおそらく、奴らは私どもが使った逃げ道を見つけ、時期に我々を追いかけてくるでしょう。私たちは心配で夜も眠れません。……王子、どうか私たちをお救いください」

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