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Passion 吐夢
シンと静まった空気、そこから漏れる吐息は、車内に響く。
「はっ...ぅ、ぁ」
声を漏らしたくないのか貴之は、ギュッと口を噤んでもまた、刺激に吐息と共に声が漏れた。
シャツを捲し上げると肉球で胸の先を押しては、甘噛みで刺激を繰り返す。
その、刺激にたまりかねて、貴之が狼の姿のマックスの頭をグイグイと押した。
「待て、お前...サカリか?」
と、思い当たる節を伺えば、そうだと返事をするかの様にペロリと貴之の口周りを真っ赤な舌が舐めとった。
「マジかよ...」
鼻の頭を押し返し身体を起こすと、何かを考えるように頭を項垂れた。
身体は熱い...下半身もあの刺激で出したいと未だに脈を強めているのだ。
「せめて、人になれ...出してやるから」
伝えればどんどんと身体が変化を見せる。
もう見慣れた変態は、今までの生きていく中で1度も見た事は無いし、そうならない事が当たり前の世の中で生きて来た貴之にはあまりに珍事だった。粗雑で整えなどしない髪、しなやかに伸びる四肢。
変態を終えたマックスがギラギラとした目を向けながら四つん這いで、貴之の前へと進んだ。
「マックス...いいか?出すだけだぞ?」
貴之は、全裸のマックスの股間を見て息を飲んだ。立ち上がったそれは早く早くと言うかのようにピクピクと揺れ、先端から滴る液を指先で潰して塗りこんだ。
「うっ...」そんな声に、気を良くして貴之は熱を緩やかに撫でる。
はっはっと短く吐き出される息と、両肩に置かれた手は徐々に握る力が強くなって行く。
くちくちと車内に淫靡な音が響き、川で湿気った身体は熱を高める。
「ぅ、タカ...」
そう、唸るよう名を呼び首筋に噛み付いてきた。
「ちょ、マックス...」
チリッと瞬間的痛みを感じ、抵抗を見せた貴之の香りをすーっと吸い込む。
マックスの手に力が篭もり、ぶるりと身震いをすると手の中へ勢いよく吐き出された。
「ぁ、あ...」
快楽の狭間の漏れ出る声に、貴之の腰も自然と揺れる。止まらない欲はとりあえず1度排出しなければと熱を孕んだ貴之をジーンズを下げて取り出した。すぐさま擦り付ければ、マックスも貴之の首筋や胸の先を舌でぴちゃぴちゃと舐め出した。
「ぅ、マックス...っ、出る」
手の動きを早くすると、あっと言う間に体液が迸った。
────────
タバコをふかして、家の前にあるテーブル替わりに使えるような岩に腰掛けて空を見上げた。
あの後帰って来て、気持ちのやりように困ってしまった貴之は、夕食を取ってすぐに外へと出て来たのだ。
木々が風に揺れ、空には満天の星空。日本にいた頃にはあまり見れなかったし、見る時間も余裕もなかった。森の中では狼が、遠吠えする声も聞こえてくる。
「タカ」
名を呼ばれハッと振り返えれば貴之の用意した服を着たマックスが横に座った。
記憶が曖昧である事は、あの事故のあと理解したが、この男は自分が守らなければならないと。
そんな風に考えていた貴之が、あろう事か触発されて自分も快楽に逆らえなかった事を悔やんでいた。
「マックス...お前は、狼の世界へ帰らないのか?」
貴之は不安そうな顔で、隣の男に問う。
去っては欲しくないのだろうが、昼間見た狼の姿の狩りはまさに日々命を繋ぐためにしてきた事なのだろうと推測できた。
「タカ、傍にいる」
その言葉に貴之は安堵したかの様に息を吐いた。
体重を掛けると、マックスが貴之の肩を抱く。
「そうか」
幾日も超えて、マックスの優しさが身に染みていた。まるで中毒患者のようにマックスに触れていたい。そんな思いが生まれていたのは確かだった。だがまさか性欲の対象になってしまうとは思いもしなかった貴之だったが、実際その事案は起きてしまっている。
「認めざるを得ないのか」
そう吐き出して部屋へと戻った。それから数日に1度の頻度で、マックスは貴之を求めるようになり、気が付けば互いに服を脱ぎ肌の温もりをも分け合う様になった頃。
(あぁ、マックスが好きなのか...)
貴之はそう、納得してしまった。
人ではない変態する狼、好きと言う感情の前に人になれる事が興味を湧かせたのは確かだった。そしてそれをずっと興味の言葉に縛り付けたかったのは貴之。
意識し出すとどうにも気持ちがむず痒い。
いつものように、尻に鼻先を突っ込まれると恥ずかしいし、舐められるのも、変に神経が敏感になった。
「タカ、ヤダ?」
とても狼の目は冷たいのに、求める時は熱を孕む。そして、その熱に絆されてしまうのだ。
「恥ずかしいから」
慣れてきた頃には気にもせずに、屁をかけてやった事もあるが、今は羞恥心の方が勝ってしまう。
「タカ、スキ」
その言葉は甘く、気が付けば互いに求め合ってしまっていた。
やっと届いたローソファーに座って、のんびりしていると、マックスが人の姿でキスを強請る。
床に膝を突き、首筋を舐めとると耳を甘噛みしキスをする。
「はぁ...マックス」
「んっ、タカしよ?」
そう甘く誘われれば、貴之も困ってしまう。距離感が大事だと、そう思ってもこればかりは逆らえないのだ。
マックスに腕を引かれ、ローソファーからずり落ちる。トサッと倒れ込むと、横たわった貴之の上にマックスが覆い被さる。起き上がろうと抵抗をしてみるも、腕は抑えられて動けない貴之はチラリと彼を見た。心までも凍り付きそうな視線の奥に熱を孕む。
「タカ、スキ、しよ?タカに挿 りたい」
ダイレクトな落とし文句に、貴之は真っ赤になって顔を背けた。
「い、1度...だけだぞ?」
「うん、タカ...本気でする」
その言葉に狼の本気とは?と、貴之が考えてる間に胸元が押し上げられ、舌でいつもの様に胸の先を突いたり甘噛みを繰り返し、その刺激に貴之もびくびくと身体を跳ねさせる。
「可愛い、タカ...」「バカっ!俺は男だ」「うん」
────はぁ
甘い吐息が、室内に響いた。ソファーから、ずり落ちた身体をひたすら舐めまわしていたマックスが、ゆっくりと抱き上げる。
「マックス?」
「ベッド行こう」
抱き上げられた意図を知り、貴之も首裏に手を回す。
「無茶すんなよ? 」
「うん」
その無茶は何に当てはまるのか、これから成される営みについての言葉なのだろう。
ドアを開きベッドへと下ろされると、貴之は自分でワイシャツを脱いでタンクトップ1枚となった。
「それも脱いで」
と、ジーンズを指して言えばははっと貴之が笑った。
「脱がす楽しみは、味あわないのか?」
「興味、ない...タカだけでいい」
その言葉に赤くなりながら自分でジーンズを脱ぎ捨てればマックスも同じように下着1枚でベッドへと上がった。
重なる肌は互いの温もりを伝えて、触れ合う場所は熱を灯していく。ひっきりなしに舌は互いの肉厚なそれに擦り付けられて、互いに感情は膨れ上がった。
胸の先の尖りを指で摘まれ、くりくりと捻られるとビクと体が勝手に跳ね上がる。
逆の先に、歯を当てれば貴之が、堪えきれずに声を漏らした。
「んぁっ...」
その声に気を良くしたマックスは、更に追い詰めるように貴之の身体をまさぐった。
「も、そこばかりやめろって」
布団の枕に押されて、眼鏡がずれる。それに気付いたマックスが眼鏡を取って、キスを深める。
「邪魔はいらない」
「ちょ。ん...マッ...クス」
水音に負ける程の声にマックスはニヤリと笑う。
ピンと尖った、貴之の胸の先が期待に震えていて、それに気付いたマックスは先端ではなく周りを指でクルクルと行き来する。
身体をモジモジとさせていた貴之が、もどかしさにマックスを抱き寄せた。
「ふふっ...タカ、どうして欲しい?」
「ちゃんと触れ...」
「いっぱい声出ちゃうかもよ?」
「っ...あっ!!」
真っ赤になって、そっぽを向けば自分を見ろと言いたげに、尖った先端を舌で弾いた。
「タカ...すき」
その言葉に、引き込まれ溺れる様に声を上げる。
「ぅ、あぁ...」
疼く下半身を触れてくれと言いたげに擦り付ける貴之の意図を理解したように、マックスもそれを擦り付ける。
「あっ!」
一気に汗が吹き出そうになって、はーはーと呼吸を荒くした貴之の熱は下着の中に放たれ、黒いボクサーパンツがジワリとシミを作る。
「もう、出したの?」
最近、マックスがいて気になるから出してなかっただとか、そんな言い訳を思い付いたが口から出たのは、自分のものではないかのような高い声だった。
「ひあっ!」
マックスが、下着の上から握り込み中は吐き出した液体でグチグチと、音を立て擦って来るのだ。
『やめっ、だ、出したばっか、ひぅぁっ!!』
思わず飛び出た日本語にマックスは、怪しく笑った。
「はぁ、この香りスゴイ...興奮止まらない」
ずるりと、下着に入り込んだ手はヌメリを伝って、あちこちを揉みほぐして行く。
『はっ、はっ、も、や』
程よい愛撫に気が狂いそうになりながらどうにか漏らした日本語はマックスには、どう届いていたのか。
指が溝をなぞり、何度も揉むようにほぐすと指がゆっくりと貴之の体内へ入り込んでくる。
「うぁ、ぁ、ぁ...」
感じる違和感と、込み上げる感覚に背中を思わず反ってしまったのだろう、その動きで指が更に奥へと入り込み貴之は悲鳴に似た声をあげた。
「あぁ...もう、ガマンできない...」
ギラギラと欲を孕んだ視線をぶつけられ、これから身に起こる事への期待が増幅したかのように貴之も甘い息を漏らせば、マックスが自分のと貴之の下着を取り去った。
青臭い香りが広がり、その香りをマックスは肺いっぱいに吸い込んだ。
「タカ!」
仰向けに寝ていた貴之を転がして尻を持ち上げれば、さらに香りを強めて、マックスはひくつく尻の中心に舌を押し込んだ。
『ひぁっ!やめ、汚いっ!マックス!』
叫んでうつ伏せにされた身体を捩りながら訴えたが、貴之の声は聞こえていないかのように、舐める事に集中していたマックスは、止まることはなかった。
中までしっかり舐めほぐして、マックスの身体がのっそりと、貴之の背中に乗り上げた。
「はぁ、はぁ...タカ」
荒い息遣いがマックスの興奮を物語っていて、尻の割れ目をぬるぬると、行き来する熱に貴之は「はっ...」と息を飲んだ。
「タカ...」
「ぅ、ああぁぁっ!」
ミシリと、音が聞こえるような圧迫感と、中に入り込んでくる違和感が貴之を襲った。
四つ這いで両手は枕を握りしめ、伏せた上半身の頭だけが持ち上がる。
マックスの手は片方は尻をもう片方はベットにべたりと付いた胸を持ち上げないよう背中を押して腰を揺らした。
「っぁ、やめ...」
「止まらない...」
言葉を被せられ、涙目で訴えた言葉は軽く流されてしまった。
マックスが動く度に、圧迫感は増して、身体はビクビクと痙攣を起こした様に引き攣り、呼吸さえも苦しい。朦朧とした意識の中で、口角から零れた唾液が糸を引いて枕へと落ちた。
「くる、し...」
「きっ...つい」
押し開かれる窮屈さと、押し開く痛みに互いに喉から声を漏らす。それでもマックスは止まることなく貴之の奥深くを暴く為に、腰を振り貴之の反応を見ながらも押し進んだ。
「あぁ...も、や、マックス...」
「はっ、タカ...止められない...」
そう互いに言いながら、マックスは貴之の背に置いていた手をふにゃりと萎れたモノへ滑らせ扱くとあっという間に立ち上がりそれに合わせたように身体も弛緩する。
そのタイミングで再奥へ突き進んだマックス。
「ふぁ...はいった...」
汗をびっしりと額や頬骨から落とし、やっと一息着いたように、深く深呼吸をする。
貴之も、最後の一突きに目の前がチカチカとして、涙を零していた。
「少し、このまま...」
そう言いながら、貴之の背中にキスを降らせた。
「痛てぇよ、マックス」
「ん、ごめん」
労うように、キスを散らし貴之の熱をゆるゆると扱く手は止めずにいた。
「気持ちいい...」
先端から零れる液体を指で伸ばして、上の部分を包み込むように擦れば、繋がった場所がキュンキュンと収縮を繰り返す。
「っ、タカが、吸い付いて、凄い...」
ぶるっと震えて甘い息を吐くマックスに「もう動け」と、許可を出した途端マックスのスライドが貴之の内壁に擦り付け出した。
突き上げられる度に、あっあっと声を漏らす貴之がギリッと枕を噛んで声を殺す。
「ふっ、ふっ...タカ、声を...」
ぱちゅぱちゅと粘着質な水音を立てながら、貴之を扱く手を早めると、枕を噛み締めていた口もあっという間に快楽に抗えない。
「あっ、も、でる」
片言に伝えれば、マックスの手は酷く卑猥に貴之のそれを頂点へ導く動きをし、腰も同じように速度を早めればあっという間に、マックスの手の中へ熱を放つ。
「うぁあ!ぁ、ぁ、ああ!」
強い刺激と、快楽に翻弄され貴之は叫ぶ。
まるで、狼同士の交尾の様にマックスも喉の奥からぐぅぅ...と低い唸り声を、漏らした。
「はっ、タカ!出るっ!も!」
言葉の区切りの度に腰を打ち付け、最後は貴之の最深部へと熱を放出する。
「あぁぁ、中...熱い!あぁ!」
注がれた熱をダイレクトに感じた貴之も、汗だくでマックスが抜けると腰は自然とペチャリとベットへ沈んだ。
マックスも、横たわる貴之の横に倒れ込んではぁはぁと息を整え2人で目を合わせて笑いあった。
「タカ...好き」
その甘い言葉に、俺もだと貴之は返してしまった。
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それからは互いに寄り添い、身体を重ねる機会もぐっと増えた。マックスの体力にヘトヘトになりながらも、究極の快楽を貴之は感じてしまっていた。翌朝の身体はだるいが、その分マックスが気を使って甘やかしてくれるのを、貴之は嬉しいと思い溺れた。
互いに1度交われば、もっと深くと探究心が芽生え、体位も色々と試した。そんなある日だった。
気だるい体で、時間を確認する為に携帯を開いた貴之。
「なっ...」
電話は全て登録してある実家の番号だった。
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