42 / 101
代償行為→sideS
頭の中で考える言葉はドイツ語なので、日本語変換機能が働いてないくらい朦朧としてると、つい口からそのまま飛び出してしまう。
富田君がドイツ語を知らなくてよかった。
2人には告白しろとばかりに背中を押されたが、その勇気はまだない。
Ich dichは、好きだって意味。
思わずつぶやきたくなった。こんな関係に、こんな言葉は不毛過ぎて苦しい。
言う事で快感中枢が刺激されるから、言っただけ。
苦しいことは、苦手だから、1週間もしたらちゃんとやめないと…………ちゃんと。
富田君は、いつものように甲斐甲斐しく身体を拭いたり綺麗にしてくれる。
嫌いだとは言われても、すごく優しいから勘違いする。嫌いなら、ヤるだけヤッて帰ればいい。
最初からそうだ。
「…………真壁はドイツ人なのか?」
「日本人。…………名前だって、日本だろ」
ガキの頃は日本人を主張しすぎて、逆にイジメられたっけ。イジメは逆上したらヒートアップする。
「目ん玉、コンタクトじゃねえから」
執拗に目を舐めていたのは確認してたのか。
「4分の3は日本人。残りだけドイツ。目ん玉とかは先祖返りらしいよ……」
「ふうん。そか。まあ、オレも一緒だからなー。オレはまったくドイツ語しゃべれねえけどさ」
一緒?
「富田君もドイツのクォーターなの?」
「ああ…………会ったことねえけど、ばあさんがドイツ人らしい。ドイツ語しゃべれんのすげえな」
なんだか親近感が湧いて、俺は少し嬉しくなる。だけど、富田君は俺のようには、姿形にソッチの要素はあまりない。
「10歳くらいまで、ドイツに住んでたから。逆に俺、日本語、少しおかしいだろ?」
ずっと、それでイジメられた。
「おかしかねーけど、ヤンキーにしちゃあ、丁寧だよな。」
少し考えこみながら、富田君は素直に答えてくれる。
「そうか?俺の日本語、ハセガワとか日高に教わったから、ヤンキーっぽいかと思ってた。小学生の時の、ホントに大事な友達なんだ」
「ふうん…………」
ごろりと俺の横に富田君は転がり寝そべる。
鼻梁が少し高いのは、遺伝もあるのかもしれない。
ただ、ただ、見つけた共通点が嬉しく感じる。
「…………なあ、アンタのこと……抱いて寝ていいか」
富田君はおもむろにそう呟くと、返事も聞かずに俺を引き寄せて抱きしめた。
ともだちにシェアしよう!

