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游移不定→sideS
奢りだと言われてちょっと良さげなイタリアンレストランに連れ込まれて、普通に飯を食っているのだが、なんだか違和感だ。
いつもイライラしたような富田君の表情は、この間からひどく落ち着いていて、普通にイケメンに見える。好戦的にイラついている表情は、野生動物みたくて近寄りずらいかんじだったんだけどな。
なんだか、好意をもたれているような錯覚をしそうになってしまう。
身体を繋げているからなのかもしれない。
実際に俺もそうなんだから、きっと富田君もそうなのだろう。
まやかしみたいなもんで、いつ消えるかわからない、そんな頼りない気持ちだ。
今日にでも最後だと言われそうな、不安間。
「こないだの朝飯の…………その、礼だ」
富田君は、あまり口数は少ないほうで、しゃべらないイメージだけど、この1週間で色々話して少しづつ分かってきた。
元々脅迫とかしてくるタイプでもないし、今更だけど、ホントになんでこんな真似してるのかも、本当に謎すぎる。
1回だけだと思ったし。
俺は海鮮スパゲティをくるくるとフォークに絡ませながら、ちらと見やる。
「朝飯気に入ったのか。また、作るよ…………」
仕上げにエビを刺して口に運ぶ。
まただなんて、フラグを残したりして、我ながらあざといかもしれない。
こんなん、デートみたいだとか思う自分もどうかしてるし、話題がなくて居心地悪い。
「アンタ、料理うまいのな」
「ひとりで食うのも、うまいほうがいいし。ラップしとけば、かーちゃん食うしな」
「ああ、そういや…………オマエのおふくろさん、前に会ったけどさ、すげえ美人な」
「…………え、もしかして俺に飽きたからかーちゃんとか……?ちょっと、それは待て。俺はお前をとーちゃんとは呼べない」
思わず混乱しながらスパゲティをぐるぐると回してると、おいおい巻きすぎと手を掴まれる。
「美人とは言ったけど。ンな…………熟女好きじゃないから。変な心配すんなよ。…………襲ったりとか……しねえから」
もごもごと言うけど、まあ、普通にそんなことしないだろうな。
手を掴まれたとこから、熱が走ってくる。
「まあ…………卑怯モンのオレが言っても信憑性ないけどさ」
自嘲するように呟く富田君に、なんだか俺の心のどこかが疼くように痛む。
卑怯者だと言いながら、脅迫をやめないのは、何故だろう。
暇つぶしというわけでもなさそうだけど。
頭がぐるぐるする。
「…………いや、ふつーにかーちゃんはねえよ。なに、マジに答えてんだよ」
思わず巻きすぎたスパゲティを口に含んでモシャモシャと食べて会話をかきまぜた。
「そうだな…………あと、あー、あのよ……コレ」
ゴソゴソと富田君は、ポケットから小さい袋を取り出して俺に手渡す。
「……なに?」
「…………運気の良くなる、なんか腕輪だ。アンタに似合うかと思って」
袋をあけるとシルバーのバングルが入っていた。なんだか頬が緩むのを我慢しながら腕を通す。
なんだか、変な感じだけど、嬉しくてすぐに腕に嵌めた。
「運気ね?…………ありがと」
「…………おう…………」
微妙な空気の中でレストランを出ると、すっかり空に星が出てて口から出る息は白くて肌寒い。
富田君は手にしていたコートを羽織って、ナチュラルな足取りでホテル街へと向かう。
コートの下の制服は見えてないので隠したつもりなんだろうな。
奥まった場所の入口に入ると、行きつけなのか迷いなくパネルを押して鍵をとると、俺の腕をひく。
「慣れてるな」
別に俺もこーいうとこで、女の子と遊ぶから人のことは言えないけどさ。
「いや、…………初めてだ。普段は…………溜まり場に連れ込むから」
言いずらそうな言葉が返ってくるが、あまり初めて感がなかったな。
でも、溜まり場には連れ込まれたくねえな、輪姦コースだろそれは。
そうなんだよな、富田君は俺を他の奴と輪姦しようとかそういう脅迫にあるあるネタをしてこない。
飽きたらするのかもしれねえけど、その前にケジメつければいいかな。
部屋に入り靴を脱いでコートを脱ぐと、富田君は俺の肩を軽く掴む。
「なあ、今日はオレにアンタの服を脱がさせてくれ」
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