65 / 101
僅花一朝→sideT
士龍の仲間たちは、オレをキツく睨みつけて不審そうな納得いかない顔をしているのに、士龍はすでに面倒になってしまったらしく、空き教室をでようとオレの腕を引っ張る。
オレが奴らの立場だったとして、やはり納得しねえし、殴られても仕方がない。
村澤さんに殴られたとこはかなり痛えが、反撃しようとは考えない。
それだけのことをしている自覚はあるし、村澤さんは、大体1発殴れば気が済む体質だ。
まあ、士龍ほど仲間に愛されているアタマはいない。それを敵対勢力の奴に掻っ攫われたらおもしろくねえのは当然だ。
「ちゃんと話すっつったのはオマエだろ?中途半端すんなよ」
オレは、士龍の肩を掴んでグイッと椅子に座らせてもどす。
めんどくさがりなのは知ってるが、ちゃんとしないときっと消化不良だ。
隠すのは嫌だと言うくせに、それ以上にめんどくさがりな性格は大体わかっている。
「だってよ、すぐ納得してくれっと思ったし、ナオヤすら味方してくんねーしよ」
子供のようにぷうと頬を膨らませて唇を尖らす姿は、ホントに可愛らしくて仕方がなくて、わかったといいたいんだけど。
士龍は、直ぐに仲間が承知すると考えていたんだろうけど。
「俺らは、士龍サンの味方ッスヨ。この赤髪が気に食わないだけです」
「ウチを抜けたクセにどのツラ下げて、士龍サンと付き合うとか!」
幹部たちがワイワイとオレを誹謗するのを、士龍は、なんとなく悔しそうな顔で唇をキュッと噛んで、眉を寄せて聞いている。
「悪ィ、俺がコイツんこと可愛いって思ってンだ。もちろんオマエらんことも大事だけど………………さ。ホンキなんだ……」
オレはそんな風に言ってくれると考えていなかったので、思わず目を見張って隣で立ち上がる長身を見上げた。
「そりゃさあ、毎回さ絡んでくるのウゼーなァって最初は思ってたケドよ」
「……士龍サン、騙されてっかもしれねーすよ。コイツはテッペンとるのにウチと争わなけりゃラクなはずだし」
木崎はオレを指差して、必死に詰め寄る。
「俺は元々、テッペンなんざ欲しくねーよ」
面倒そうな顔で、首を竦めてみせる。
「士龍がテッペンとるなら、オレははいらねーし」
「…………だーから、俺はそんなめんどくせーのはいらねェ。大体、コイツら面倒みるんで充分なんだよ。上でも下でもなんでもねー関係になるケドな」
オレの言葉にムッとして、士龍はぎりっと睨み下ろしてくる。
その表情にゾクゾクしてしまうのは、性癖的にヤバいなと思う。
「……わかりました。士龍サン。……富田、士龍サンになんかあったら、俺らは全てをかけてオマエを潰しにいくからな……」
木崎直哉は、俺に念を押すように吐き捨てて空き教室を出て行く。
他の奴らも、それに習って士龍に軽く頭を下げて出て行く。
「熱いなあ、2年生」
「ショーへ、オマエは先に富田を殴ってるからね。アイツらのこと言えないからね」
栗原さんと村澤さんは、ぐだぐた言いながらも士龍の背中を叩く。
村澤さんは士龍になにか耳打ちして、士龍は顔を真っ赤にして村澤さんの背中を叩き返す。
やっぱりこの人たちの関係は、羨ましい。
「虎王、お許し出たしー、帰るぞ」
のんびりとした士龍の言葉と腕をくいとひかかれ、我に返ってオレは、士龍の背中を追うように教室を出た。
ともだちにシェアしよう!

