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回顧辿道→sideS

俺の母親は、県会議員の娘でドイツに留学していた時に知り合った父に恋に落ちた。 父はドイツの病院で医師として働いていて、父には既に婚約者がいた。 だけど母は、どうしても父が欲しくて交際をせまり俺を宿すと、親の権力をかさにしてドイツの病院の医院長にも圧力をかけて父と結婚した。 だけど、そんなんじゃ本当の愛情など得られはしない。 父はずっと婚約者を思っていたし、母親との間にできた俺になど愛情はなかった。 父が母親とは、俺が小学校を卒業するまでと約束していたのも、婚約者の方に子供がいることも、幼心に、俺はそれをぜんぶ分かっていた。 母のワガママに付き合っている父を見て、この人には決して甘えてはいけないと思っていた。 ドイツから戻り、俺が小学校を卒業したあと、約束どおり父と母は離婚した。 母は甘やかされて育ったお嬢様なので、まだ、看護師をしていれば、必ず父が戻ってくると信じている。 それがもどかしいけど、なんだか否定をしたらいけないと思っている。 母親からは一応の愛情はあったけど、父の代わりの代償的なものだったので、あまり愛情とかは信じなかった。 だから、俺は好きだと言われたり頼られたり、人から受ける好意には弱い。 愛されたがりだと、自分でも思う。 なんとかしてやりたくて、仕方がなくなる。 俺だけを見てくれるなんて言われたときには、ホントに弱くなってしまう。 お人好しとが言われても、仲間を守りたくなるのも、助けにいきたくなるのも、全部そうだ。 人からの愛情がほしい。信じていないくせに、人一倍欲しがっている。 なんで許すのか、なんで受け入れるのか? そんなのたまに見せてくれた優しい態度が嬉しくて心が揺らぎまくって、好きになったからに決まっている。 乾いていたこころに、なんだか水がしみこむように感じたからだ。 そんなこと、言っても、多分、虎王にはわからないし、俺しか知りえないこと。 どうして、彼だったかなんて…………俺にもわからないけど。 口ではけして言わなかった分、態度で感じ取れたからかもしれない。 そう思いながら、俺は教室をでてからずっとその背中を見つめていた。

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