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青天霹靂→sideS
俺の言葉を聞くと、虎王は激昂したように目を見開いて眉をギュッと寄せて皺を作って怖い形相になる。
「なんでだよ!!アンタも捨てられたんだろ!アイツのこと恨んでねーのかよ。オレは絶対別れねーからな!!」
声をあげて、俺を抱きしめようと腕を掴もうとするので、スッと身を引いて避ける。
必死で俺との終わりを全力で拒む虎王の態度は、本当に可愛いすぎて、こんなふうな顔をさせたくないと、思う。
嘘だぜなんて言って抱きしめ返してやれれば、どんなにいいか。
とか、心から願う。
だけど、それができない。
やっと、こんな俺を好きだと言ってくれる人を見つけたんだけどな。
弟、か。
だから可愛いって思ったのか、無意識に。
そんな第六感とかはないから、そういうんじゃないんだろうけど。
「捨てられたと…………とーちゃんを恨むのは、俺はスジ違いだからさ」
俺が呟いた言葉に虎王は、まったく理解不能とばかりの顔をした。
俺が小学卒業するまではと12年もの結婚生活に付き合ってくれてたのだ。
かーちゃんのワガママと、世話になってたじーちゃんの義理のために、好きな人との生活を諦めて俺達の父親をやってくれていた。
それなのに、あの人の大事な息子を俺が奪うなんて、できねえだろ。
今まで奪い続けた俺にできることは、あの人の目につかないとこで、ひっそり生きることだけだ。
「こーやって俺が生まれられたんは、とーちゃんのお陰だ。オマエが別れないなら、俺はここで死んでもいい」
俺の飯を食って、社交辞令でも美味しかったという言葉をくれただけで、もうそれだけで充分だとか思ってる。
静かに言い返すと、グイッと虎王は俺の胸倉を掴みあげた。怒りで真っ赤になった、顔。
綺麗な赤い頭とコラボレーションして、まるで赤鬼だな。
「な、に、言っちゃってんだよ。冗談でも…………バカなこと言ってんじゃねえよ。あんな、仕事のことしか考えてないような、非情な父親の為に死ぬとかアホ言うな」
俺の首根っこを掴みよせる虎王の拳は怒りにふるふる震えている。
俺が死ぬと言ったことに、怒っているのが分かって、本当に愛しいと、思う。
…………あーあ、修羅場とかめんどうくさいな。
ホントに、めんどくさいことは、キライだ。
だから、ちゃんと、終わりにする。
俺は力技で首から虎王の腕を外して、身体を振りほどく。
「……冗談じゃねえよ。なんなら、今ココで死んでみせるし、別にオマエが俺をブチ殺しても構わねェ」
説得なんかできねーし、それに非常に面倒になってきた。
女と別れる時とかどーしてたかな。
大体、イメージと違うと俺がふられるパターンだったしな。
殺されるなら、本望だけど。
殺人とかで、虎王が捕まったらヤバイよな。死ぬ寸前で自殺になるように、しなきゃなあ。
「んな、ヒデェこと言ってんじゃねーよォ、オレはオマエのこと愛してンのに…………」
無理やり俺の腰に腕を巻きつけて、抱きしめようとして、ワンワン泣きじゃくり始める虎王を抱き返したいのを我慢する。
愛してるとか、…………初めて聞いた。
最初で最後か。
天井を見上げると換気扇がくるくる回っている。
傷つけてゴメンね。
俺も大好き…………だったよ、虎王。
だから……ね。ホントにこのまま、死んでもいいくらいだ。
「じゃあ、恋愛終わりか、俺の命を終わらすか、どっちにするか、たけおが決めてよ」
あーあ、俺も相当病んでるなァと思う。
虎王を追い詰める言葉を吐いて、近くの包丁を握ると頸動脈に押し当てる。
虎王の気持ちを、俺は…………利用して別れようとしている。
氷のようにセラミックの刃が、膚を冷たくこおらせる。
実際病み過ぎだよなァ。
ギリギリと皮膚に刃が食い込んでいき、たらりと首筋から血が滲み出す。
痛いとか思わない。
もうすこし、力を入れたら…………血管切れるか、な。
「し、士龍……、テメェ、な、な、なにしてんだよ、馬鹿野郎ォォ、分かったから、も、分かったから………………別れっから、ヤメてくれ!!」
包丁ごと腕をキッチンの台に叩きつけられ、俺は漸く虎王から、終わりの言葉をひきだした。
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