79 / 101
強制終了→sideS
キッチンに座り込んでしまい、すっかり塞ぎこんでしまった虎王は返事すらしなくなった。
頬は涙で濡れている。……泣かせてしまった。
罪悪感でいっぱいだ。
ホントは好きで仕方が無いのに、どうしようもないのに、こんな顔はさせたくないとか心が叫んでいる。
でも、仕方がないだろ。……弟、なんだ。あの人の息子なんだ。
諦めるしかない。
あき、らめる……しかない。俺が決めたことだ。
着てきたものを着直して、ジャンパーを羽織ってバックを掴むと、一応、虎王には声をかける。
「ンじゃ、帰るわ…………じゃあな……」
虎王をそのまま置いて、俺はマンションを出た。
ここに来た時はすっかりはしゃいで、アホみたく喜んでたのに、帰りにはこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。
…………足が重たい。
人生なんてそんなもん、だな。
うまくいきそうだなんて考えて浮かれていたら、軽く足元をすくわれちまう。
包丁で切りつけた首筋の傷が、ヒリヒリ痛い。
今更だけど痛い。
痛くて痛くて…………心臓が掴まれるように、ぎゅうぎゅうと痛くてたまらない。
あの時は、ちっとも痛くなかったのに。
そのまま、包丁で喉まで切り裂けば、きっとこんなに痛くなかったかもしれない。さらっと死ねてよかったかもしれない。
方向すら分からず、目の前がうまく見えない。
と、思ったら、パタパタと目から汁が落ちてくる。
……ああ……しょっぺえな。
振ったのは俺の方なのに、しっかりとダメージ受けてやがる。涙出すほどとか、ないわ。
…………情けねーな。
帰り方わからねーし、すっかり道がわからず適当に歩いたので迷子だ。
このまま行き倒れそうだ。
スマホを出して、ナオヤの番号を押すと、即座に電話が繋がる。
「……士龍サン?!……どうしたすか?」
「…………ナオヤ、まいごなうー。なあ、バイクで迎えきて。なんか、寒くて行き倒れて死にそうだから早くきて」
律儀にすぐに電話に出てくれた直哉に、俺はなるだけ軽い口調で頼んだ。
近くのコンビニの前の縁石に座り込む。
今日はホントに憎たらしいくらい、いい天気だな。
デート日和だったよなー。太陽が勿体なくて見ているのもむかつくな。
今すぐ、太陽が落ちてきて、俺に直撃して全部燃やしてくれれば、楽、なのにな。
そんなうまい話を神様は、もってきちゃくれない。
きっと、明日も同じように、やってくる。
そういう、もんだ。
ともだちにシェアしよう!

