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社燕秋鴻 →sideS
大体暇があると、皆は将兵の家のガレージに集まる。
将兵の家は、車の修理工場なので、でかいガレージがあるのだ。家は将兵の兄貴が継ぐらしく、将兵は近くの工務店に就職を決めていた。
直哉は勝手知ったる様子で、ガレージにバイクを停めると、俺を下ろして、俺が脱いだメットを受け取る。
将兵は、父親と兄貴と3人で暮らしていて、かなり自由に俺達は出入りしていて、しょっちゅう入り浸っている。
むしろ第2の家みたいなものだ。
「村澤さん…………すいません、土曜日なのに」
「士龍、ひでえカッコだな」
自室からガレージに降りてくる将兵に、直哉は声をかける。
今日は土曜日だし、ここも将兵しかいないようだ。
「切り傷深くはないみてえですけど、あの…………手当てしてあげてください。俺は帰るんで」
俺が気を使うと思っているのだろう、直哉はすぐに帰ろうとバイクのエンジンを蒸す。
訝しい顔をして俺を見下ろした将兵は、アルミの階段を降りて、俺の方に近寄ってくると、ガレージから出ていく直哉を見送る。
「をい…………なっさけねえ面してんなよ」
将兵は、俺の肩をガッチリと掌で掴んで顔をのぞきこむ。
いま、ここにいるのは、将兵だけだ。
俺は感情を抑えきれなくなって、拳をギュッと握りしめる。
出せと言われて出せるモンでないけど、道郎や将兵と居る時が、1番素に近いかもしれない。
「…………ったく、シャツまで血塗れじゃんか。ほら、消毒とかしてやるから上脱げよ」
将兵に、ベンチに座れと促されて、ジャンパーと制服の上着をら脱いでからベンチに腰を下ろす。
「富田にやられたんか?」
救急箱というには雑な道具入れをもってくる将兵に、俺は首を横に振る。
「いや。…………自分で…………やった」
「ふうん。自分でとか、オマエらしくねえね。どったのよ」
綺麗な消毒用のアルコール脱脂綿で、首筋をぬぐいながら、キツめの目を細めて俺をさぐるように見上げる。
「こうでもしなきゃ………………終われなかった。全部終わりにした」
「そんな、ボロボロになってまで、終わりたい理由はなんだ。」
静かに傷に手当てをほどこしながら、将兵は問いかける。
「…………あのな………たけおとおれ………とーちゃんが、一緒だった。イボ兄弟?ってやつ」
「………………ガチかよ」
黄色い消毒液を塗りながら、将兵は俺を見やり少し考えこむ。
「らしくねえ…………オマエなら、そんなの気になんなそうだけどな」
ガーゼをテーピングで止めて、道具箱にピンセットとかをしまいながら首を傾げる。
「…………きょうだい、なのは、そんなに気にならない。……俺ははとーちゃんに負い目があって…………逆らえない」
将兵に素直に打ち明けるとなんだか少しだけだが、心が軽くなる。
「だから、別れるっで言ったら、イヤだって言われて…………別れないなら死んでやるって、首んとこ切った」
「………オマエねえ………。過激すぎて、逆に富田が哀れだな」
将兵は平等でとても素直だから、俺も素直に話せる。
「そんだけ…………なんだけどさ。すげえツライ」
やっぱり、好きだってことは、ツライってことなのかもしれないな。
「まあ、オマエはオマエの気持ちを通したわけだしよ、仕方ねえって思ってはいンだろ」
「うん…………」
「まあ、忘れろ。俺が特大のおっぱいついた女紹介してやっから」
大体将兵は、女の子をおっぱいの大きさで判断する。
そんなに、俺はおっぱい好きじゃないんだけどな。
「…………わかった…………」
「オマエが落ち込んでっと、皆心配になるからよ…………まあ、俺と道郎には愚痴っていいけど」
「…………大丈夫、普通にしてられる」
普通にするのは、得意だ。
昔から、どんなに辛くても、普通にできた。
結局、俺はあの人に憎まれたくなくて、虎王を捨てただけ。
勝手なのは、俺の方だから。
将兵は、俺の説明だけでそれがわかったみたいだ。
下手な慰めよりも、気分が楽になる。
「…………家まで送るか?」
「うーん、1人になりたくないから、今日はショーちゃんち泊まる」
「しゃあねえな。じゃ、メシ作ってよ。士龍のメシうまいし、肉じゃが希望」
「オッケー」
俺は、勝手知ったる将兵の家へと一緒に入っていった。
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