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社燕秋鴻 →sideT

気がついたら次の日の朝だった。 寝てもいなかったが、動きもしなかった。 と、いうか気力がなくてまったく動けなかった。 士龍がいつ帰ったのかも、覚えてない。なんだか、悪い夢の中のようで、まったくオレには現実感がなかった。 かなり血が出てたし、手当てしねーとヤバイとかは頭の片隅で考えてたような気がするが、はっきりいって意識が定かじゃない。 オレはこんな打たれ弱かっただろうか。 運命の神様とかもしいるんだったら、最初から叶うはずも無い想いなら、ちっとだけとかぬか喜びとかさせんじゃねーよと怒鳴り殴り倒したい。 昨日の夜は、士龍とはこれからの幸せのことしか考えてなかったのに。 士龍は、無事に帰れたんかな。怪我…………してたし。 ここから、士龍の家までは結構な距離があったはずだ。 士龍の美人なおふくろさんは、オレが死ぬほど恨んだ相手で、死ぬほど恨んだ息子が士龍で。 あたまがパンクしそうだ。 ガッコー行きたくねーな。 つか動きたくない。 士龍が前言撤回なんかしないのは、あの感情を捨てたような目をみれば分かる。 頑固な目だ。よく見てみれば、本当に父親そっくりだ。 大キライな、男にそっくりで、だから反発もしたのかもしれない。 それなのに、なんで好きになったんだろう。 東高1強いのに、ひたすら平和主義でヤル気がまったくなくて腹がたって仕方なくて。 なによりも、憧れていた。 別れないなんて言おうもんなら、きっとざっくりやってたのも分かる。 …………あれはまったく脅しなんかじゃない。 オレがかなわないと認めているのに、その力を使おうとしない。 むかついて仕方なかったのに。 惹かれてたまらなかった。 立ち上がる気力もねーとか、ホントにオレもヤキが回っている。 「アニキ、か…………よ」 口にすると、涙が溢れてきそうになる。 そんな風に呼びたくはない。 アニキだなんて、呼んでしまったら最後な気がする。 ガッコーに行ったら、目をあわせたら、オレはどうなるか分からない。 やっと手に入れたと思ったら、砂のように手の平から零れ落ちてった。 後一年、どうやって過ごせばいい。 この気持ちのまま、顔なんかあわせられない。 辛すぎる。 とりあえず、しばらく整理がつくまでは、学校に行くのはやめておくしかないな。 士龍が好きだ…………だけど、以前にも増してどうしていいのか、わからない。

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