85 / 101

青息吐息→sideS

「士龍さん、タケちゃん知りませんか」 虎王の親友の元宮がうちのたまり場の空き教室にやってくる。 普段ならたまり場にくるようなことは、縄張り荒らしみたいなものなので、ざわりと周りの連中が立ち上がるが、俺は座れと視線を向けて顎をさわる。 「シラネェ」 アイツが元宮にすら連絡してねーのかと思うと、かなり不安になる。もしかしたら、俺が振ったから…………自殺とかしてねえよな。 酷い振り方したし。 もしかしたら、とか思って吐き出しそうになるのをこらえて、感情を無理やり殺して平然とした表情を返す。 「タケちゃん、士龍さんと付き合うって、先週すごく嬉しそうだったから」 元宮は俺の返答に戸惑いをみせながら、逆になんで俺が知らないのかと、半分責めるような視線を向けてくる。 虎王は、元宮に俺と別れたことすら話してねえのか。 「………虎王とは、………別れたし」 「は?!!?なんでですか!!」 「…………めんどくせーからだよ。付き合うとか、面倒になっただけだ…………オマエには関係ねぇだろ」 元宮に、さっき直哉にした説明をもう一度するのかと、イラついて怒鳴る。元宮はつかつかと俺に歩み寄り、俺の頬を派手な音をたててぶん殴った。 後ろの幹部たちがざわりと立ち上がりかけるのを、俺は横目で見やって抑える。 まったく痛くはないけど、ダメだ…………胸が痛い。 平然としてなきゃ、ダメだ。 「謝りません。士龍さん。タケちゃん、アナタに…………本気だったんですよ」 「…………だったら、どうすりゃいいんだよ。本気だったら…………エラいのかよ」 元宮の胸ぐらをつかんで、思わず殴り掛かるのを抑えてイラついて怒鳴る。 俺が遊びだったわけじゃない。 責められる謂れはない。 「俺だって本気だったんだ…………」 ぼそりと呟くと、俺は拳を握りしめて泣きたい気持ちを堪える。 …………らしくないな。 面倒だから、ゴメンネといつものように、へらへらしとけば済む話なのに。 感情が全然おさえきれない。 「じゃあ………………」 「ダメなんだよ、本気でもダメなんだ…………」 握った拳を机にたたきつけると、机の板が二つに割れて、拳から血が溢れてくる。 あーあ、机がご臨終しちまった。 …………兄弟だから? そんなんじゃない。 俺のエゴだし、本気でも、あの人に憎まれたくはなくて。 それが、本気じゃないってわけじゃないけど。 俺が天秤にかけて、選んだ結果だから。 「士龍さん……タケちゃんの家に俺と一緒に迎えに行ってください」 元宮は俺の返事もきかずに、有無を言わせず腕をひいて教室を出た。

ともだちにシェアしよう!