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塞翁之馬→sideT

背中に彼がいると思うだけで、なんだか胸のあたりの動悸がおかしいことになっている。 士龍は、背中で素直にオレに背負われていて、一体何を考えているのだかまったく読めない。 別れた時の様子では、もう二度と触れることができないとまで思っていたのはオレだけだったのか。 わけがわからなくて、ただただ混乱ばかりしている。 日高のマンションのリビングに入る。 「うわー、やっぱしヤッちゃんの部屋オシャレ!」 中に入ると背中の上で士龍は声をあげる。 男子高生にしては、センスがよさそうなものばかりが揃えられていて、そこらへんのヤンキーの部屋には思えない。 まあ、気になる違和感といえば部屋の隅にある使い古されたサンドバックとか、ウエイトトレーニングの器具が転がっているが、持ち主はなんとなく予想がつく。 「シロをソファに降ろして。とりあえずしっかり殺菌とか止血とかしなくっちゃなんねーし」 救急箱を手にして、日高は指示するので、そっとソファーの上に士龍を降ろす。 「…………ありがとな」 視線を合わせられて、思わず軽く逸らしてしまう。 正気に戻ると、どうしていいのかわからなくなる。 「オレこそ…………助けに来てくれて……ありがとう」 呟くように声を出すと、ふと柔らかい笑みを返される。 やっぱり、何を考えてるかまったくわからない。 「貫通はしたみたい。弾近くにおっこてた!」 士龍はあの混乱の中で拾ってきたのか、血まみれの銃弾を見せる。 「あれほど、チョッキ以外のとこは気をつけろって言われてたけどな。聞いてなかった?」 「んー。たけお見たら、ワーッて頭に血がたまっちゃった」 「血がのぼる、だよ」 日高に日本語を訂正されながら、士龍は大人しく治療を受けている。 つか、病院いかねえで、大丈夫なのか。 不安になりながら手持ち無沙汰に、立ち尽くしていると玄関が開く音がして、低く声が響く。 「たでえま!!」 リビングへと入ってきた、ハセガワはジャケットを脱ぎながら、日高にハンガーを渡されて、しつけられているようにジャケットをかけると、部屋の前の上着かけにひっかける。 「ちゃんと2人を送り届けた?」 「おーう。それよか、シロ、大丈夫か?」 士龍に寄っていき、風呂に入るから後は手当よろしくと日高がリビングを出ていくのに頷いて、ハセガワは士龍の傷口を看ている。 「弾丸は貫通してる。良かったな」 ハセガワは、慣れた手つきで手当てしはじめた。 怪我に慣れているのか。 なんだか、安心してきたのと同時にあたまがぼっとしてくる。 「あ、オマエも疲れただろ?そっち側に座ってな」 ハセガワがオレに気がついて、むこうがわのソファーを指すので、ゆっくりと腰を降ろす。 対峙した時には、恐怖しか感じなかったが、士龍を見て話している姿は意外なくらい穏やかだ。 落ち着いたら、病院に連れていかないとな。 …………オヤジには会いたくはないけど…………、何かあったら後悔じゃすまなくなる。 ちゃんと、弟にならないと。 会えただけで、良かったと…………感謝しねえと。 ぐるぐると頭の中でそればかりをオレは繰り返していた。

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