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親子兄弟→sideS
「神経や骨には傷ついてないが、筋が切れているからな手術が必要だな」
とーちゃんは俺の足を診察して、レントゲンを俺に見せながら、ふくらはぎの真ん中あたりに指し棒を当てる。
「見てわかるだろ?止血をちゃんとしたから、大事には至らなかったが…………神経に当たったら歩けなくなるぞ。無茶するな」
.....お前はもっと無茶しろよ、とは思う。
虎王のことは被害者だと説明したのだが、ものも言わずに出会い頭に虎王を一発ぶん殴っていた。
クスリなんかに手を出すタイプじゃないし、お前も見捨てたよな、とーちゃん、もう少し息子を信じやがれと俺も思わず怒鳴ってしまった手前、ちょっと気まずい。
警察沙汰ばかり、起こしまくっていた俺が言える義理じゃないんだけどね。
背後で頬を腫らして、虎王はすっかり拗ねている。
「なあ、手術しないと、どーなっちゃう?」
ちょっと面倒くさいので思わず聞くと、父親の顔が険しくなる。
「手術の手配はしておく。必ず手術するんだ。歩くのは問題ないが、放置したら障害が出る。血清はうっておくが、破片とか体内に残っていたら、腐敗するしな」
それは、いろいろ逃げる時とか困るな。
「わかったよ。とーちゃん」
「士龍。.....オマエも、そろそろ、落ち着いて将来のこととか…………」
「かーちゃんには、転んだことにしといて」
小言が始まりそうなのでスルーする。
かーちゃんには、俺の言うことじゃあまり信用がないので、いつものように言い訳を頼む。
「士龍さん、虎王を助けてくれてありがとう。あなたが、真壁さんの……息子さんなのね。昔の琥次龍(こじろう)さんにそっくりだから、すぐにわかったのだけど」
虎王のかーちゃんは、泣き腫らした目を向けて、深々と俺に頭をさげる。
どことなく虎王と似た表情をしている。
かーちゃんとは違うタイプで、地味目でおとなしそうな女性である。
「え、と。…………俺のために、取り返しただけだから。お礼言われても……」
なんて説明しようかと考えていると、とーちゃんに首を横に振られる。
それ以上、言うなってことか。
大人はずりーよな。まあ、虎王もまだいう気はなさそうだしな。
「偶然兄弟で同じクラス、なんてこともあるんだな」
とーちゃんは話を逸らして、俺の足に包帯を巻きつけてカルテに何やら書き込む。
「俺がダブルスだからだな」
「士龍さん、虎王と仲良くしてあげてください。半分でも兄弟なわけですし」
「も、いーよ。母さん。言われなくても士龍とは超仲良いし、命懸けでオレを助けてくれた命の恩人だから」
虎王は、自分の母親の腕を軽く引いて、俺を見返し、
「今日は母さんと家の方に帰るから。また、明日な」
と、手を振ってふらつく母親を連れて診察室を出ていった。
「士龍、アイツを助けてくれてありがとう」
「俺のためだから」
改めて言葉をかけるとーちゃんに、俺は首を横に振る。
「だから、アイツは俺のだよ」
ちいさい頃から父親になにかねだるようなことはしたことがなかった。
この人には甘えてはいけないと、本能的にわかっていた。
「本気なのか?」
「本気じゃなければ、俺も命かけないし、何度も男に抱かれたりしないよ」
親にそんなこと真顔で言ってしまえるのは、やっぱりみんながいうとおり俺の羞恥心はお散歩してるのだろう。
「……お前が誘ったのか?」
「ん……いや、たけおがヤリたがったのが…………キッカケかな」
「……約束は守るが…………」
「かーちゃんには、内緒ね」
「言えるか」
複雑そうに苦虫を噛んだような顔をする父親を可哀想だとは思う。
「送って行こう」
まだまだ、苦虫をかみかみしたままのとーちゃんに腰を抱かれて支えられながら診察室を出る。
「心配しないで、たけおは、これから俺が守るから」
何があっても、俺は守る。
命をかけて。
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