114 / 116

爆弾発言→sideT

遊びにいくのだと、士龍が3年の教室がある新校舎へ行きたいというので、オレはあまり来たことがない新校舎へ入る。 3年の校舎には、ヤベェ先輩しかいねーから実際来るのは本気で遠慮したい。 入った途端に、なんだかピリピリした空気が流れてくるので体が強張る。士龍は、オレの気持ちまでは全くわからないようで、まったりいつもと変わらない様子で廊下を歩いている。 まあ、士龍にとっては去年までの同級生で、その中でも1番つええと言われていたのだし、緊張する理由もないのだから、当然といえば当然か。 「キャハ、コッチくるなんてめずらしー、士龍ちゃんじゃないの。足なんかしたのーん?」 廊下で気軽に声を掛けてきたのは、小倉派の幹部の峰さんである。 小倉さんの右腕で狂犬と言われているくらいヤバイ人なので、はっきり言ってあまり関わりたくない。 「あ、ミネちん。ああ、足か、んー、こないだ、テッポウでうたれた。」 「キャハハッ、マジかよ!?てっぽうって、相変わらず刺激的だーね、士龍ちゃんは。大丈夫なの??あんまり油断してると、足だけに、あしもとすくわれちゃうよ」 「あしもと、すくう?足がダメでも腕はだいじょぶだよ」 士龍の言い草に、峰さんは両脚を叩いて笑いながら、オレの方をを気にするようにちらちらと見る。 「なーに、誰かと思えば富田じゃない。士龍ちゃんと一緒にいるとか、いつの間に仲良し?」 「んー、こいつは、俺の彼氏ィ」 士龍は、ニヤニヤしながらオレの頬にちゅっと唇を押し付けてくるので、思わずビックリして腰をぐっと引き寄せてしまう。 「ブッワッ、キャハハ、なにそれ!!マジかよ?とうとう、ついに士龍ちゃん、男に走ったかよ、すげー笑えるーっ」 ギャハハと笑い、オレの背中をバンバン叩いてくるが視線は笑ってねえのは気の所為か。 「うわ、士龍、今日はこっちにきたんか?きて早々、なーに爆弾発言してやがるんだよ」 目の前に現れた村澤さんが、まるで庇うかのように峰さんと士龍の間に入り込む。 「あ、ショーちゃん。ちっと怪我したから、それ報告しよっかかなってさ」 のんびりした調子で士龍は村澤さんにピースサインしてみせる。 村澤さんは吊りあがり気味の目で、俺をグイッと睨みつける。 「報告は、ナオヤからきてるし。つかな、富田、オマエさあ、なに、士龍に怪我させてんだよ」 グイッと胸ぐらをつかまれて睨み降ろされる。 「すいません、村澤さん」 流石に士龍の右腕と呼ばれていただけあって眼力は強い。木崎とは比較にならない。 「ちょいちょい、ショーちゃん、いぢめたらダメダメ。離して離して、今回のは俺が悪いの。前に話したように、俺が怪我した時は、コイツのこと振って別れてたわけだし」 村澤さんの手を軽くとって、士龍はオレの胸ぐらから離させる。 「士龍…………そうだけどさ。まあ、でもよ、コイツはオマエを傷つけないって約束した」 「前に話したケド、先に傷つけたのは俺なの。今はよりを戻したけどね」 「意味わからないが、怪我してまで助けにいくほど、何がいいんだって」 「ズバリ、カラダだけどね」 ほんわか笑顔で言い募る士龍に、俺は気恥ずかしくなりいたたまれない。 まあ、村澤さんにとって、抜けたヤツはいつまでも敵認定されても仕方ないしな。 「ショーちゃん、ギャラリー集まられても困るから、あっち行こうぜ。みんないんだろ?」 シロウは視線を空き教室に向けて、松葉杖代わりにオレに体をあずけて、ゆっくり歩き出す。 「なんだよ、シローちゃん。結婚会見しにきたの?」 教室から、ニヤニヤしながら出てきた背の高いツーブロの男は、今の東高のトップである小倉遥佳(はるよし)である。 三白眼で目つきは悪く何を考えているかわからない。 「あ、ハルちゃんじゃん。久々だねえ。まあ、俺の彼氏を自慢にきたのよ?」 気さくな口調で爆弾発言をかます士龍の口をいっそ塞ぎたい。 「ついに男に走ったって?……へえ、そんなに具合いいの?このコ、1度使わせてよ?」 無造作に俺のケツを触ってくるので、思わず睨みあげると、士龍はやんわり小倉さんの腕をオレから引き剥がし、 「そっちじゃない、たけおは、イイちんこしてる。ハルちゃんには貸してあげないけどね」 「ブッハ、マジで!?シローちゃん、マジかもう処女ぢゃないのね」 「残念ながら、俺の処女は、たけおに捧げたのよ。」 なんとも不毛な会話で、口調は穏やかなのに、なんだかピリピリと緊張感が走る。 東No.1と呼ばれている小倉さんは、さながら不戦勝のようなものだから、士龍にはコンプレックスがあるようだ。 「悪食すぎねーか?オマエ、富田派の富田だっけ?こいつを落としたのは、打算のためか?」 小倉さんが威嚇するように、あきらかに敵意を孕んだ目でオレを見据えてくる。 「…………そんなんじゃねえですよ。士龍は……どんなオンナより、可愛くてエロくて、たまらねぇからすよ」 ぼそりと返したが、はっきり言って気恥ずかしい。 小倉さんは、ふーんと呟き、 「シローちゃん、俺にもヤらせてよ?」 「ヤダ。俺は一棒主義よ?それに、ハルちゃんは、彼女いるっしょ。浮気はよくねーよ」 じゃあねーと、手を振りオレの背中を軽く叩いて、教室へと促した。 睨みつける小倉さんの目は剣呑で、ざわつく気持ちだけがたまらなく不安になった。

ともだちにシェアしよう!