13 / 101
生死肉骨→sideS(回想)
ドイツの病院に留学みたいな形で俺が産まれてから10年は、とーちゃんとかーちゃんとドイツで暮らしていた。
とーちゃんは、よく日本に帰国していたが、俺は初めて11才の時日本に戻った。
日本に帰ると、とーちゃんは家に帰らなくなったし、かーちゃんも看護婦を目指して学校に行き始めたので、いつも家でひとりだった。
日本語は、書けるし読めるようにもなったけど、発音がうまくできなくて、学校には友達もいなかった。
「なあ、タチバナって、ちんちんついてんの?外人って、みんな女の子なの」
この頃はとーちゃんとかーちゃんは離婚していなかったので、苗字は橘だった。
「おんなのこ、ちがう」
クラスメイトは、休み時間になると俺の持ち物をとったり隠したりする。
最初は気にならなかったけど、多分これって、イジメってやつなんだなと、鈍い俺でもぼんやりと分かった。
「ぼく、がいじんでない、ちんちん、ある、おとこのこ」
「外人じゃないなら、ちゃんと日本語しゃべれ。そんな片言じゃ、わからねーよ」
「だよな。日本語しゃべれよ」
やんややんやと、男子たちがからんでくる。
何が気に入らないのかもわからない。
日本語をちゃんと話しているつもりなのに、彼らにはまったく通じていないようだ。
文法とかが難しいし、話すのが大変だ。
両親ともドイツ語だったし、いままでそれで話してきたので、日本語なんかまったく知らなかった。
かーちゃんも忙しいので、日本語を教えたり話してはくれない。
「それに、日本人は髪の毛黒いんだよ。こんな金髪でよく日本人っていえるよねー、うそつきじゃん」
髪をグイグイ引っ張られて、痛みに泣きながら首を振ってぼくは日本人だって言っても、笑われる。
寂しいし学校にいくのも嫌になっていた。
日本には飛び級制度がないらしく、やっている授業も、5.6歳で出来ていたものでほんとうにつまらない。
「てめぇら、何してんだ?おい、そいつ泣いてんじゃん」
周りの男子より頭二つくらい大きい男子が、苛立ち紛れに席の近くにズカズカ歩いてくると、男子が静かになる。
髪の毛を引っ張っていた男子が、ビクビクと震えあがって、俺の髪の毛を離した。
俺をみおろす表情は、釣り目でひどく野生的な獰猛な獣のようだった。
ころされる、、、。
今度は、この男子にいじめられるのだ。
「あ、トール君、俺ら別にタチバナをいじめてたわけじゃないぞ」
邪魔とばかりに、彼は男子達を押しのけると、涙でべしょべしょの顔を見て、自分の袖口を引っ張り、俺の顔をゴシゴシと拭う。
「!!なんだ、こいつ!うわー、天使かよ!!すんげえ、キラキラじゃん」
彼の言葉の意味はよくわからなかった。
だけど、彼が俺の顔を褒めてくれているのは、よく分かった。
「オマエらなぁ、可愛いからって泣かすなよ。今度コイツ泣かせたら、オマエらただじゃあおかねーぞ」
そう言った彼は、その日から俺のヒーローだった。
俺に対してのイジメは、それからまったくなくなったのだ。
それと、彼とその幼馴染と一緒に遊ぶようになり、学校も楽しくなった。
一緒に喧嘩の仕方も教えてもらったり、それからの2年間は、本当に愉しい日々だったのだ。
いつまでも、それが続くとその時は信じていた。
ともだちにシェアしよう!

