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忘恩負義 →sideT

さして困った表情すらみせずに、困っていると嘯く真壁はオレの癪に触って仕方がない。 まるでオレの真意を図るかのように、ガラス玉のように光る瞳で下から見上げている。 間違ってもオレには、真壁のようなデカイ男を抱きたいとかそんな性癖も興味なんかねえ。 ましてやヤルっつっても俺の息子が機能するかどうか怪しいところだ。 だからといって、屈辱を受けたままでいられなかった。 ただコイツが感情的になるところがみたい、それだけだ。オレの言葉にキレてタイマン勝負でもしてくれれば御の字くらいに考えていた。 なのに、なんで、承諾してんだよ。 大体、真壁が昔のハセガワと知り合いだということを、ハセガワに打ち明けたのは俺のためだ。 多分今までもハセガワに絡みにいかなかったのは、昔の恩もあるからだろう。 俺は、卑怯なことをしているし、恩を仇で返すというのはこのことだろう。 むしろ、腕力じゃかなわねえのだから、真壁がオレを叩きのめして従わせればいいだけの話なのだ。 なのに、なぜか、どうやら脅迫されてくれる気のようだ。 前から思ってたが、コイツは結構頭が足りてない気がする。 東高にくる時点で、筋金入りのバカかヤンキーには違いないのだが、強いのに好戦的ではない性格からみて前者に違いない。 腕をぐいと引っ張られて、体勢を崩すと真壁の胸板に抱きつくような格好になる。 密着すると胸元からほんわりとした布団で嗅いだイイ匂いがする。 「床でヤッたらイタそーだし、そんじゃ、ベッドいこうか」 よいこらせっと掛け声をかけられて、俺の体ごと起き上がりそのまま担がれる。 って、何て怪力なんだよ。 脅迫するのはいいとして、オレ、こんなヤツ相手にホント息子さんが機能するのか。 トサッとベッドの上に投げられて、上を見上げると真壁がさっさとシャツを脱ぎ始めている。 ていうか、ちっとは抵抗しろと思うのだが、惜しげもなく鍛えられたうらやましくなるくらいの体を晒す。 肌には刺し傷や切り傷の痕が、ところどころ残っていて歴戦の名残を残している。 「しつもーん。俺ってさあ、もしかして富田君に嫌われてるの?去年、何もいわねーで、俺のとこから抜けちゃったけど」 ベルトをカチカチいわせて引き抜いて、ズボンと下着を脱ぐと倒れている椅子を引き起こして背もたれにかける。 意外に几帳面な性格のようだ。 「嫌いだ。去年出てったのは、小倉さんを叩きにいかねぇ、アンタに失望したからだ。抜ける時は、アンタ停学中だったし……な」 結果、3年になれた小倉さんが、なんの苦労もせずにやすやすとトップになった。 オレたちが担いでたアンタの方が最強だったのに、と、そう考えると悔しくて仕方がなかった。 トップになる気がねえやつのとこに、いつまでもいても仕方がない。 オレが出した答えはそうだ。 「ンー、そっか、セックスしてえっていうから。もしかして、俺に片思いしてたのかと思ってさ。あー風呂入った方がいい?」 能天気なことを言って、残念そうな表情を浮かべてみせる。どこまで本気かわからない。 全裸になった真壁はよいこらせと自分のベッドに腰を下ろす。 「いや、イイ…………」 って、何考えてるんだ。まったくよめない。 全裸になった真壁を見やると、真壁の息子は何の兆しもないがかなり大きい。勃起したら俺の2倍くらいになりそうだ。 「…………アンタを屈服させてえって言ってるだろっ、片思いとか、何がどうなったらそういう風に思えるんだ」 かなりお気楽にできている頭の中身に呆れながら、隣に座る真壁を見やる。 去年、一緒にいたときは、派閥のやつらを守ってくれる頼もしい存在だって思っていた。 でも、コイツは守ることしかしなかった。 自分から、どこかを叩くとかそういったことはやらなかったのだ。 「屈服ね……、富田君はそーいうことばっか考えてるからさ、眉間に皺できて怖い顔になるんだぜ。屈服してやるから、ちょっとリラックスしようぜ」 あいかわらずの上から目線で諭されるように言われて、ぐつぐつと感情が昂ぶる。 どうしてコイツは人をイラつかせるのがうまいんだろう。 どうして、オレはここまでコイツに苛立つのだろう。わからない。 去年までは、憧れていた。 確かに憧れていたんだ。それなのに、いまは屈辱感でいっぱいで…………。 アンタを組み敷いて、屈辱を与えたいと思っている。 恩人であるはずの、アンタを…………卑怯な手で穢してやる。

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