26 / 101

合縁奇縁→sideS

富田君は、また元の眉に皺を寄せた不機嫌な顔に戻っていて、イライラしたような表情でベッドに座っていた。 「帰ろうと思ったんだけどよ…………、もう暗いし道がわかんねえ……」 ぶすっとした表情で、俺をギラギラとした目で睨み上げる。 さっきみたいに優しい顔をしてくんねえかなァと、少しだけ残念に思う。 「いーよ、朝、俺がガッコまで送るし。冷めちまうし飯食おうぜ」 座卓を取り出して、盆の上のカレーと麦茶を並べる。 「アンタ、馬鹿なのか?…………オレは、アンタのこと犯したんだぞ?もっと…………ビビれよ。それどころか、平気でオレを泊めるっていうのか」 また、なんかわけのわからない理由で怒っているようだ。 俺はわけがわからず、スプーンとフォークを富田君へ渡して首をかしげた。 「俺は、さっきヤリてえときにヤッてかまわねえって言ったぜ。…………別にオマエを泊めても問題ねえだろ。襲われるから怖いとか、俺が言うとでも?」 何を怒っているのか、何を言ってるのかさっぱりわからないのだ。 「…………アンタに言うだけ無駄か。…………確かにハラ減ったわ……」 疲れたような顔をして、俺の目の前に置いたカレーを食べ始める。 一口食べた瞬間に、富田君の目の色が変わる。 「……うめえ……。これ、アンタ、作ったの?」 ちょっと驚いたように俺を見る。 その顔が、みたかったんだよな。 うん、俺、料理うまくてよかったとホントに思う。 「だろォ?かーちゃん昔から夜いねえからさ、ガキんときから自炊してたんだ」 「……ふうん、オヤジさんは?」 「離婚した」 「そっか……ホント、そこらのオンナの料理よりうめえんじゃねえの?ああ、いっそオンナになっちまえば、ケツでのセックスもよかったみたいだしさ」 意地の悪い口調で言った後に、ひどく気まずそうな表情を浮かべてぱくぱくと無言で食べ始める。 そんな顔するなら、そんなふうに意地悪いわなきゃいいのになァ。 優しい顔してるときは、ホントにイイ男なのになァ。もったいないことこの上ないと思うよね。 「確かにさあ、オンナ抱くよりら富田君のちんこのが気持ちヨカッタ」 「ッカハッ、ブッハ、まて、まて、まて、って何、アンタ!素で答えてんだよっ、んなこと、言うなッ」 感想を伝えたら、激しくむせながら顔を真っ赤にして怒鳴られて、俺はびっくりする。 エッチの最中は、あんだけ言え言えって言ったくせに、いまはダメとかわけがわかんねえ。 「…………クスリつかったし、そのせいだろ」 ぷいっと不機嫌に横を向いてしまったのは、何故だかわかんないけど、なんだか可愛いなと思う。 指でつんつんしてら弄り回したい気分だ。 「アンタが屈服してくんねえから、イライラがおさまんねえ……」 「屈服ならしたじゃねえか、セックスしただろ?」 「アンタが喜んじゃったら意味ねえの。わかる?イヤだ、ヤメテっていうのを…………無理矢理じゃねえと」 なんだか、言ってる意味がわからない。 セックスするならキモチいいほうがいいんじゃねえのかな。 言ってることがわからず首をひねる俺に、はーーーーっと富田君は深くため息をつく。 「どうすりゃ、アンタは嫌がってくれるんだ?」 「……富田君は、俺に嫌がらせしてえの?」 「そうだよ」 素直に答えてくれるし、悪い子じゃないんだけどな。 なんで、そんなにひねくれちまっているのかまったく読めない。 嫌がらせって言われても、基本苦手なものはないし、別にセックスも悪くはなかった。 ちっと体が痛いってくらいだけだ。 「……じゃあ……真壁……、アンタ、オレのオンナになれ」 じっと目を見られて真剣に言われて、ちょっと戸惑う。 セックスはしたし、女のようにちんこ受け入れたし、これ以上女になるってなんだ? 女装……して、デートか。 「え……俺が着れるスカートあるかな、リップとか……塗ったらいいのか?」 「がふっげほげほ、ちょ、まてまてまて、アンタ、何考えてんだ?」 あわててカレーを呑み込み、また激しくむせながら富田君は俺に待ったを入れる。 「いや、女になれっていうからさァ……スカートはくのかなって」 「それは、断じて俺も見たくねえ。そんなでっけー服はねーだろ」 「だよねぇ、オーダーメイドすっしかねえだろうけど……色々公共のひとたちに迷惑なんじゃないかなーとか思うんだ。客観的に」 自分が女装をした姿を思い浮かべて吐きそうになる。 確かにこれはこれでひでえ嫌がらせだ。 小学生の時なら似合ったんだけどな。 富田君はそんな俺に焦れて詰め寄ると、ぐっと顔を寄せてくる。 「だーかーら、セックスだけじゃなく、オレのモンになれって言ってるんだよ……」 「……????」 富田君の言ってることが分からず、俺はじっと見返す。富田君の使う日本語は、少し俺には難しいのかもしれない。 「恋人になれって…………コト」 富田君は真っ赤になって俺から視線をずらすと、ぷいっと横を向いてひたすらカレーを掻きこみ始めた。

ともだちにシェアしよう!