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合縁奇縁→sideS
富田君は、また元の眉に皺を寄せた不機嫌な顔に戻っていて、イライラしたような表情でベッドに座っていた。
「帰ろうと思ったんだけどよ…………、もう暗いし道がわかんねえ……」
ぶすっとした表情で、俺をギラギラとした目で睨み上げる。
さっきみたいに優しい顔をしてくんねえかなァと、少しだけ残念に思う。
「いーよ、朝、俺がガッコまで送るし。冷めちまうし飯食おうぜ」
座卓を取り出して、盆の上のカレーと麦茶を並べる。
「アンタ、馬鹿なのか?…………オレは、アンタのこと犯したんだぞ?もっと…………ビビれよ。それどころか、平気でオレを泊めるっていうのか」
また、なんかわけのわからない理由で怒っているようだ。
俺はわけがわからず、スプーンとフォークを富田君へ渡して首をかしげた。
「俺は、さっきヤリてえときにヤッてかまわねえって言ったぜ。…………別にオマエを泊めても問題ねえだろ。襲われるから怖いとか、俺が言うとでも?」
何を怒っているのか、何を言ってるのかさっぱりわからないのだ。
「…………アンタに言うだけ無駄か。…………確かにハラ減ったわ……」
疲れたような顔をして、俺の目の前に置いたカレーを食べ始める。
一口食べた瞬間に、富田君の目の色が変わる。
「……うめえ……。これ、アンタ、作ったの?」
ちょっと驚いたように俺を見る。
その顔が、みたかったんだよな。
うん、俺、料理うまくてよかったとホントに思う。
「だろォ?かーちゃん昔から夜いねえからさ、ガキんときから自炊してたんだ」
「……ふうん、オヤジさんは?」
「離婚した」
「そっか……ホント、そこらのオンナの料理よりうめえんじゃねえの?ああ、いっそオンナになっちまえば、ケツでのセックスもよかったみたいだしさ」
意地の悪い口調で言った後に、ひどく気まずそうな表情を浮かべてぱくぱくと無言で食べ始める。
そんな顔するなら、そんなふうに意地悪いわなきゃいいのになァ。
優しい顔してるときは、ホントにイイ男なのになァ。もったいないことこの上ないと思うよね。
「確かにさあ、オンナ抱くよりら富田君のちんこのが気持ちヨカッタ」
「ッカハッ、ブッハ、まて、まて、まて、って何、アンタ!素で答えてんだよっ、んなこと、言うなッ」
感想を伝えたら、激しくむせながら顔を真っ赤にして怒鳴られて、俺はびっくりする。
エッチの最中は、あんだけ言え言えって言ったくせに、いまはダメとかわけがわかんねえ。
「…………クスリつかったし、そのせいだろ」
ぷいっと不機嫌に横を向いてしまったのは、何故だかわかんないけど、なんだか可愛いなと思う。
指でつんつんしてら弄り回したい気分だ。
「アンタが屈服してくんねえから、イライラがおさまんねえ……」
「屈服ならしたじゃねえか、セックスしただろ?」
「アンタが喜んじゃったら意味ねえの。わかる?イヤだ、ヤメテっていうのを…………無理矢理じゃねえと」
なんだか、言ってる意味がわからない。
セックスするならキモチいいほうがいいんじゃねえのかな。
言ってることがわからず首をひねる俺に、はーーーーっと富田君は深くため息をつく。
「どうすりゃ、アンタは嫌がってくれるんだ?」
「……富田君は、俺に嫌がらせしてえの?」
「そうだよ」
素直に答えてくれるし、悪い子じゃないんだけどな。
なんで、そんなにひねくれちまっているのかまったく読めない。
嫌がらせって言われても、基本苦手なものはないし、別にセックスも悪くはなかった。
ちっと体が痛いってくらいだけだ。
「……じゃあ……真壁……、アンタ、オレのオンナになれ」
じっと目を見られて真剣に言われて、ちょっと戸惑う。
セックスはしたし、女のようにちんこ受け入れたし、これ以上女になるってなんだ?
女装……して、デートか。
「え……俺が着れるスカートあるかな、リップとか……塗ったらいいのか?」
「がふっげほげほ、ちょ、まてまてまて、アンタ、何考えてんだ?」
あわててカレーを呑み込み、また激しくむせながら富田君は俺に待ったを入れる。
「いや、女になれっていうからさァ……スカートはくのかなって」
「それは、断じて俺も見たくねえ。そんなでっけー服はねーだろ」
「だよねぇ、オーダーメイドすっしかねえだろうけど……色々公共のひとたちに迷惑なんじゃないかなーとか思うんだ。客観的に」
自分が女装をした姿を思い浮かべて吐きそうになる。
確かにこれはこれでひでえ嫌がらせだ。
小学生の時なら似合ったんだけどな。
富田君はそんな俺に焦れて詰め寄ると、ぐっと顔を寄せてくる。
「だーかーら、セックスだけじゃなく、オレのモンになれって言ってるんだよ……」
「……????」
富田君の言ってることが分からず、俺はじっと見返す。富田君の使う日本語は、少し俺には難しいのかもしれない。
「恋人になれって…………コト」
富田君は真っ赤になって俺から視線をずらすと、ぷいっと横を向いてひたすらカレーを掻きこみ始めた。
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