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顔厚忸怩 →sideT

真壁の作ったというカレーは本当にうまくて、じっくり煮込んで時間かけて作ったのが分かる。 普段一人暮らしで、コンビニ飯しか食べてないとこういう飯が、本当に身に染みる。 無造作に乗ったエビフライもカリッと揚がっていて、少しカレーが衣に少ししみこんで味を増している。 今揚げたわけじゃないだろうから、わざわざオーブンで焼きなおしたのか。 こんな料理を作る彼女はいままでもいなかったし、多分これからもいねえだろう。 さっきの蕩けた表情でオレを欲しがっていた真壁の姿が思い出されて、目の前でカレーを頬張っていた男とはまるで別人のようだった。 …………ずっと、あこがれていた。 憧れがやぶれた時に、失望感と一緒に多分もっと違うものも生まれた気がする。 だから、苛立ちばかりが募って仕方がなかった。 オレは精一杯の告白をしたのに対して、真壁はひどく驚いたような顔をして見つめている。 まあ、そうだよな。驚かないわけがない。 「…………オマエ、俺のこと嫌いじゃねえの?」 不思議そうに返ってきた答えは、オレの言葉に対しての逆に問いかけ。 そりゃそうだ、オレは真壁に嫌いといっておいて、まったく正反対の提案をしているのだ。 「嫌いだ…………」 「それ、ホントに俺への嫌がらせなのか?オマエ自身への嫌がらせじゃなくて」 心底不思議そうな顔をして、首を傾げて真意をさぐるように俺をじっと見てくる。 もし、好きだと言えばいいのだと返すのか? でも、嫌いだ。 嫌いだ……。 あこがれすぎて、追いつけねえから、大嫌いだ。 ぎゅうっと目を瞑ると、真壁の顔がすっと近づいてくる。 「コイビトは、恋してねえとなれねーンだぞ」 ずっと、ずっと前からこがれている。 追いつきたくてしょうがねえくらいに、恋焦がれている。 だけど、そんなこと言えっこない。 「…………嫌いだ。だからオレは……オマエを俺のオンナにしてえんだよ」 言った途端に、真壁の唇が覆いかぶさってきて、カレー味の舌先が俺の唇へ押し込まれる。 角度を変えてためすように唇を吸い上げられて、オレもその舌をなぶるように舐めあげる。 鼻から漏れる呼気は熱く、口元が緩くなって唾液が溢れている。 ゆっくり離れて糸を引く唾液を眺め、真壁は目を伏せた。 「…………なあ、ドキドキした?」 「なんだよ、急に!?」 胸に手のひらをあてられて問いかけられ、わけがわからず首を横に振る。 「キスしてドキドキすんのが、恋だよ。キスしてドキドキもしないのに、お付き合いはできません」 真面目な顔で返される。 俺がここまで言ってんのに、悟るくらいのことしろよ。 どうして、コイツはわかんねえんだよ。 イライラがバンッと限界を超える。 「だったら…………もうイイ。オマエなんか、オレの精液便所にしてやっから」 オレはガンッと床を蹴って、真壁のでかい体を床に押し倒す。 手に入らないなら、このまたぶっ壊してしまえばいい。 オレの気持ちもこいつ自身も。 凶暴なキモチばかりが先走る。 「何、キレてんだよ…………」 ずっと分からないままでいればいい。 すっと分かんじゃねえ。 ふざけんな。

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