29 / 101
自覚症状→sideT
真壁の体はかなり発熱していて、汗もびっしりかいていて、だらだらと筋肉質な肌を伝い落ちていく。
重たい身体を抱えてベッドに転がして衣服を脱がせたものの、何を勘違いしたのか、優しくしろとかぬかすので、思わず怒鳴りつけちまった。
さっき出しておいたタオルで体を拭い、ぜいぜいと繰り返す呼吸が尋常じゃなくて、オレの方もへんな冷や汗が出る。
内臓が、さっきのセックスで傷ついたのか、クスリの後遺症なのかどちらかで、体が発熱しているのだろう。
体力も相当使ったと思うし、安静にしておくのが普通なのに、なんで平気そうな顔してメシとか用意してんだ、こいつ。
ありえねえし、無茶しすぎだろ…………。
心配で心配で、仕方がなくなる。
さっきまで、あんなに怒りに任せて罵倒していたというのにだ。
この感情が何なのかは、鈍感なオレにだってわかる。
分かりたくもないのだが、わかってしまう。
体を繋いだからおこる情なのか、それとも元々もっていたものなのかどうかは分からない。
オレはずっと、欲しかった。オレのことを認めて欲しくて仕方がなかった。かなわなくても、オレの存在を憧れてる人に認めてもらいたくて、近くにいてもかなわないから、外に出た。
それなのに、外に出たって、何一つ変わらなくてイラついて仕方がなかった。
人の家の洗面所を勝手に使わせてもらうのは、気が引けたがバケツを見つけて水を汲んでくると、真壁の頭の上を冷やすように乗せる。
オレも他の奴のように、真壁さんって呼んで慕っていた頃もあった。
あんな風に純粋に、慕っていられたらよかったのに。
熱にうかされながら、やさしくしてほしいといわれて、どんなに酷いことをするヤツだと思っているんだろうと思うと、酷く悲しかった。
脅迫までして、身体を自由にして穢したのは自分自身なのに、勝手な言い草である。
わかってる。オレは、この人を好きなのだ。
そんなことも素直に言えないくらい、すさんじまったけど、スキだと思っているのは間違いない。
だからさっきは拒絶されて、感情的になった。
拒絶なんかされて、当たり前だというのに。
何度かタオルを取り替えていると、ぼんやりと真壁は俺を見上げる。
「……きもち、いい……ありが、と、な……」
熱で潤んだ目でそんなことを言われると、最中のことを不謹慎にも思い出して、下半身が熱をもつ。
「……いいから………寝とけよ」
ごわごわの金髪を撫でると安心したように、目を閉じてモゴモゴつぶやく。
「………Danke …………schon」
また、天使語かよ……なんだよ、ダンケシェって。起きたら聞いてみるか。
この人がどうして、最大の人数を誇る派閥をもっているのか、言われなくてもわかっている。
飄々としていてつかみどころがないのに、仲間思いで仲間のためなら単身どこにでも駆けつける。
それでいて威張ることもなく、無邪気な人好きのする性格をしている。
そんなことは、昔から知っている。
知ってるっていうのに。
一度始めたゲームは、ケリをつけるまで終わることはできない。
そして、その結果の相手の感情は変えることなんてできやしないんだ。
自覚したところで、期待なんか……もう、できない。
ともだちにシェアしよう!

