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目が覚めたら……。
閉じ込められた箱の中で、必死に頭の中の記憶を引っ張り出して思い出した。記憶を辿ると、いくつか思い出してきた。
確か昨日は大学を出ずにバイトをしていたはず!
そっ、それから夕方に友人と会って……!
そこで突然、頭の中がズキンと傷み出した。
頭痛に近い症状と目眩も何故か感じてきた。
く、くそっ……!
そこからの記憶がない……!
なんで記憶がないんだ……!?
一体、何なんだよクソッ!!
不安が募ると怒りの感情が沸き上がってきた。急に、怒りが治まらなくなると右手で思いっきり上を叩いた。
木の板を強くバンバン叩きながら箱が壊れるのを待った。しかし、塞がれた木の板は全然びくともせず壊れる様子すらなかった。すると再び、箱が大きくガタンと揺れた。耳をすますとエンジン音の他にも、何やら蠢く音も聞こえてきた。そこで考えたのは自分は今、車の中にいることだった。
なんで車……!?
なんで箱の中……!?
これは一体、何なんだぁっ!!
箱に閉じ込められて何時間経っているか、暗闇の中ではそれすらわからない。時たま箱は大きく揺れて、そのせいで吐き気すら感じた。車は止まることもなく何処かへと走って移動しているのは確かだった。それが一体どこなのか考えるだけでも恐怖が抑えられなかった。
早くここから脱出しようと思っても上に塞がれた木の板が頑丈過ぎてびくともしなかった。それに身動きも出来ないくらいに、箱の中は狭すぎた。体は横たわっていて辛うじて手足だけは動かせる状態だった。
この箱の中は息苦しくて呼吸すら満足にできないような状況だった。そのせいで混乱と恐怖心が、時間と共に徐々に煽られてくる。
それに何でこんな箱の中に閉じ込められているのかも理由すら思い出せない。拐った奴が男か女かもわからない。これ以上の恐怖はない。それが、自分が知っている相手なのかそれとも、知らない相手かもわからない状況だ。ただ恐怖心だけが、自分の中を支配した。
ここから早く逃げ出さないと……!
ここから早く……!
でないと俺は殺されるかもしれない……!
だから早く……!
頭の中でそのことを考えながら、必死になって両手で木の板を力一杯に押した。
なんで開かないんだよ!
頼むから開いてくれよ!
あせる自分の気持ちとは裏腹に、暗闇の中で木の板を叩く音だけが虚しく響いた。
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