5 / 217

目が覚めたら……。

 木の板をひたすら叩き続けると、両手が段々と疲れてきた。  な、何か使える物はないか……? 乱れた息をしながら自分の着ている服のポケットを手探りで探した。するとそこでハッとなった。後ろのズボンのポケットに、何故か携帯電話が入っていた。それが自分の物なのかさえこの暗闇の中では確認できない。震える手で携帯電話を持つとそれは折り畳み式のだった。  あ、この携帯電話は俺のだ……!     じゃあ、俺を連れ去った奴がこれを取り忘れたのか……!?  そんなことを考えながらも、俺は真っ先に携帯電話を開いた。そして、直ぐに助けを求めた。誰でもいいから電話をしようとした。電話帳を開くと一番上に兄貴の電話番号があった。そこに電話をかけても何故か繋がらなかった。  何でこんな時に繋がらないんだよ……!? 兄貴に電話をするのを止めると、他に誰かいないのか電話帳のリストを調べた。すると二番目に、親友の名前があった。俺は迷わずに親友に助けを求めた。電話をかけると親友の真樹が出た。   「おう、どうした悠真?」   「真樹か!? 俺だよ、悠真だ! 聞いてくれ、箱の中に閉じ込められた!」   「箱~? 何言ってるんだよ急に? それよりもお前、今日も講義サボったな。 二日もサボって何やってるんだよ。次こなかったらレポート見せてやらないからな。それにバイトを無断で休んで、何考えてるんだよ。店長マジで怒ってたぜ?」 「そっ、それどころじゃねぇんだよ……! 真樹、頼むから聞いてくれ…――!」 「あ、わりぃ。女待たせてるから電話切る。またあとでかけてくれ、じゃあな!」 「た、頼むから切るなよ……!」    電話越しで怒鳴ると受話器の向こうから、女の声が聞こえてきた。 「ねえ、何やってるの真樹? 電話なんかやめて早くしようよ〜?」  女は誘惑混じりな声で真樹の事を誘っていた。受話器の向こうからは、いきなり女の乱れた厭らしい声が聞こえてきた。 「アッ……」 「ン……」 「アッ……」  女の喘ぎ声は徐々に漏れていた。真樹は、俺の電話に出る事もなく。女に夢中になっていた。 「何やってるんだよ真樹、親友よりも女かよ!?」 電話はそこでプツリと途絶えた。よくみると携帯電話のアンテナが全部立っていなかった。そしていきなり携帯電話は圏外になっていた。

ともだちにシェアしよう!