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目が覚めたら……。

犯人の口から出た言葉。それは棺桶だった。俺はまさに頭の中でその事を想像していた。半ば冗談だろと思いながらもこの状況なら十分ありえる。血の気がサーッと引くと恐怖心が頭の中に一気に押し寄せてきた。  なんで棺桶……? 嘘だろ……? 冗談だろ……?       犯人は一体何を…――?  そこで動揺が隠せなくなると、手からジワリと冷や汗をかいた。沈黙する俺に犯人は電話越しで悠長に話してきた。 「その箱はただの箱だけど、キミにとっては棺桶かな。それとも棺の方が良かった?」 「ふざけるな、なんでこんな所に俺を閉じ込める!? 早くここから出せ!」 「それはダメだ。この『ゲーム』は始まったばかりだ。もっと私を楽しませてくれよ、悠真君」 そう言って奴は嘲笑うようにクスクスと笑うと、この状況を楽しんでいる様子だった。  こ、こいつイカれてる……!   もしかしたら異常者かもしれない……!  電話越しで犯人の笑い声を聞きながら全身から寒気を感じた。わけのわからないこの状況下で、一人で楽しんでいることに激しく怒りを感じた。 「何がゲームだ…――! こんな悪趣味なゲーム、今直ぐやめろ!」 「悪趣味? 違うな、これは『罰ゲーム』だよ。キミも罰ゲームとかは好きだろ?」 「なっ、何だって……!?」 「もっともこれは序ノ口だ。ホントの悪趣味は、これからだ。どう、今からワクワクするだろ?」 『ふざけるな、お前なんて殺してやるっ!!』 「おっと、あまり怒鳴らないでくれ。怒鳴り声とか好きじゃないんだ」 「うるさい! お前の目的は一体、なんだ!? それに何で俺の名前を知っている!?」 携帯電話を片手に怒りを爆発させると、木の板を拳でブン殴った。 「何でだって? ホントにキミは質問が多いな、ちょっとは楽しんだらどうだ?」 「お前の狙いは何だ!?」 「…………」 「黙ってないで答えろよ!」 「キミは本当にお喋りが好きだな。そんなに理由が聞きたいかい? でも、まだ教えてあげないよ。なんでも簡単に教えたらつまらないだろ?」 「何だと……!?」 「じゃあ、一つだけ……。何でキミの名前を知っているか教えてあげる。あの日の夜、キミから名乗ってきたんじゃないか。そんな事も忘れたのか? フフフッ、可愛いね悠真は――」 犯人は電話越しで怪しく笑った。俺はその話しに自分の頭を抱え込んだ。  ダ、ダメだ……!   全然思い出せない……!   それどころか記憶がなくなっている……!  俺はあの夜、一体なにがあったんだ…――!? 「ねぇ、もしかして思い出してる?」 『うるさい黙れっ!!』 「どう、何か思い出したかい?」 『黙れって言ってるだろっ!?』 「キミがいくら思い出してみても無駄だと思うよ?」 「そ、それはどう言う意味だ……!?」 「さあ、何でだろう? そんなことよりも、言葉使いには気をつけな。キミの命を今握ってるのはキミではなく私だ」 「っ……!?」 「例えばキミが入っているその箱、そこに入ってるのは私しか知らない。もし私がここから離れてキミをこのまま置き去りにしたらどうなるだろうか? キミは一生この箱の中で無様に野垂れ死にするだろうね――」 「っ……!?」  何気ないその言葉に俺は大きな衝撃を受けた。そして、思わず想像すると息を呑んで固まった。 「これもある意味一種の放置プレイに入るかな? 考えるだけでも私はワクワクするよ」 「ふざけるな、人の命を何だと思ってるんだ!」 「キミの命? キミは自分の命に『価値』があると思っているのかい? そう思うと、面白いね。キミはいつも自分の人生を退屈そうにしてたじゃないか。そんな人間なんかに『価値』があると、本気で思っているのか?」 「お前は狂ってる! この最低なクズ野郎!!」 「おや?キミはまだ自分の立場がわかってないな。私が今、言ったことをもう忘れたのかい?」 犯人が電話越しでそのことを話すと、俺はゾッと背筋が凍りついた。  こいつ本当に狂ってる……。  ふざけて言ってるんじゃない……。  マジで言ってやがる……!  そう思った瞬間、犯人に対しての恐怖心が全身から沸き起こった。

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