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悪夢の始まり

――ゴトン。ドサッ。タッタッタッ。 どこからか騒がしい音が聞こえてきた。酷い頭痛で目を覚ますと目の前には、真っ白な部屋が広がっていた。 「ッ、ここは……?」 その時は単純に病院かと思った。何ださっきのは悪夢でただの夢だったのかと安堵した。しかし、どうみても何かが妙におかしい。いいや、何かがおかしいと気がついた。体に被されていたシーツを捲ると、足には鎖がつけられていた。 「なっ、何だよこれ……!? それにこれは――!?」 さらに驚いた事に全身が何故か裸にされていた。それだけじゃない。両手と両足に長い鎖がつけられていた。 「一体、どうなってるんだこれ…――!?」  鎖はベッドにしっかりと巻かれて、固定されていた。目の前にはドアがあるのにそこまで行く事もできない。 突然、自由を奪われた鳥みたいだった。羽をもがれて飛ぶこともできないような哀れな鳥だ。部屋から逃げ出したいのに、逃げられない状況に頭の中が混乱した。 「クソッ、頭が痛い! それに何も覚えてない! 一体ここはどこなんだ……!?」  繋がれたベッドの上で頭を抱え込んでいると、そこに誰かが部屋に入ってきた。不意にドアの方に目を向けるとそこには薄気味悪い真っ白の仮面をつけた男が沈黙したまま立っていた。長い黒髪を一本に結んだ長身の男は真っ赤な薔薇の花束を手に持つとそのまま部屋の中に入ってきた。 「おはよう悠真君。やっとお目覚めかな? どうやら私の作ったスペシャルドリンクが効いたようだね?」 「誰だテメェは!? それにここはどこだ!?」 薄気味悪い仮面を被った男に向かって尋ねると、人の話を聞いてる素振りもなかった。いや、完全に相手を無視しているようだった。  部屋に入ってくるとベッドの脇に置いてあった花瓶に赤い薔薇の花を飾った。男はどこか異様な雰囲気を漂わせていた。  不気味な口笛を吹きながら花瓶に飾った薔薇を指先で弄っていた。そんな素振りが一層、薄気味悪さを感じさせた。 「おい、テメェ……! 人の話を聞いてるのか!? この鎖を今すぐ外しやがれっ!!」  カッとなって怒鳴っても、人の話を聞いてない素振りで他の事をしていた。花瓶に薔薇の花を飾ると部屋に備えられていたレコードプレイヤーのスイッチを入れた。その瞬間、部屋の中に大音量のクラッシックの音楽が流れた。 『うわぁっつ!!』 大音量の音楽に堪らずに耳を塞いだ。薄気味悪い仮面を被った男に相応しいような、怪しい音楽が流れた。男は音楽をかけると、次に扉の向こうから食事が乗せられたワゴンを押して入ってきた。焼き立てのステーキの匂いが鼻を突いた。気分が悪いのにその匂い嗅ぐと気分が一層悪くなった。男は俺の前にテーブルを置くと、その上に食事を並べた。

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