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白の記憶

――突然、頭の中が真っ白くなった。  人はそんな事が平気で出来る『残酷な生き物』なんだと思い知った。はじめは、強い憤りと深い悲しみと絶望が胸の中で込み上がったが、最後はそれは憎しみへと変わった。    その話を聞いたあとに部屋を出て、壁に片手をついて長い廊下を歩いた。何故だろうか、あの子がいる病室がとても長く感じた。 歩くのが辛い。 できたらこのまま歩きたくない。見るのが辛い。胸が痛む。絶望的だ。こんなに、誰かを強く殺してやりたいと思ったのがあの時がはじめてだった。 ドアの前に佇み、深呼吸をした。そして、重たい扉を開けると病室のベッドの上に壊れたあの子が眠っていた。あの子が病院に搬送された時は酷く危険な状態だった。 あれで生きているのが不思議なくらいだ。  もう助からないかも……。 希望とは程遠くそれが瞬時に頭に過った。でも、あの子は集中治療室で奇跡的に一命をとりとめた――。  あの時は、あの子が奇跡的に助かった事に泣きながら喜んだ。でも、あの時の奇跡はこんな結末を迎える為のものだったのか。その答えを自分は今も神に問い続けている。

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