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いつか誰かの記憶
一度も会話した事がないのに何故か気になる。それは、向こうも同じだったかも知れない。
だけど自分からは話しかけない。そして、向こうからも話しかけては来ない。ただお互いに視線を向けるだけの日々だった。
二人の視線の追いかけっこには、そんな『幼い』暗黙のルール存在していた。だからお互いに視線が合う度に見つめあった。そして、俺はあいつに話しかけないまま、黙って横をいつも素通りしていた。
校舎の渡り廊下で会う度にその視線は段々と、胸が切なくなるような一瞬のときめきをあいつに感じていた――。
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