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失踪

「ちょっと真樹君! 今の態度とか、ないんじゃないの…――!?」 「はぁ?」 「悠真君、急にいなくなったんだよ? 心配じゃないの、あなた彼の親友(ともだち)でしょ……!?」 カナはそう言って詰寄ると瞳を潤ませた。彼女の心配を遮るように彼は無言で席から離れると近くの自販機の前に歩き出してそこで立ち止まった。缶ジュースを一本買うと、指先でフタ開けてゴクゴクと全部飲み干した。そして然り気無く皮肉を言った。 「俺さ、カナちゃんのそう言うところ実は前から嫌いなんだよね。どうせ悠真に気がある癖によ、下心丸だしでさ。女って恐いよな~、好きな男に好かれるためなら良い子のフリも出来るもんな。本当は自分が好かれたいだけなのにマジで笑えるっつーかさ」 『なっ……!?』 カナはその言葉に驚いた声を出すと顔中が真っ赤になった。真樹はそう言って彼女の方を振り向くと小バカにした表情で笑った。 そこにいた彼らは真樹のふてぶてしい態度に呆気をとられると誰もが言葉を失った。そんな時、彼の携帯が突如鳴り出した。突然、電話が鳴ると話の途中で平然と出た。そして、そのまま気にせずに誰かと話し込んだ。 「はい、あ~、大丈夫ですよ。えぇ。特に――」  彼は電話越しで誰かと話すと時おりペコペコと辞儀をした素振りをみせた。そして、話の途中で彼らから背中を向けると誰か暫く話し込んでいる様子だった。真樹は最後に『わかりました』と、一言返事をするとボタンを切って大きなアクビをした。  

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