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失踪

自分の頭を掻きながら彼は面倒臭そうに呟いた。その様子はどこか苛立っていた。 「ったく、店長の野郎! 人のことを扱き使いやがって! あいつが空けたシフトの穴埋めを俺が代わりにする羽目になったじゃねーかよ!」  真樹はそう言って舌打ちをするとブスッとした不機嫌な表情をみせた。そして、彼らの方をチラッと見てくると一言、言い返した。 「何だよ、文句でもあるのか? そんな目で見てくるんじゃねーよ。お前達、カンジ悪いぜ。って言うか俺は関係ねーし。むしろ、アイツが空けたシフトの穴埋めを俺がする羽目になったんだぞ。こっちが泣きたい気分だぜ。ったくマジで最悪。ああ、来るんじゃなかったな――」  真樹は不機嫌な顔でブツブツと文句を言うと、持ってきた鞄を手に持った。そしてそのまま帰る素振りを見せると振り向き際に一言話した。 「あー、そうそう。もしアイツに会ったら、俺がキレてたって伝えておいてくれ。ついでにこの前貸した漫画の本、返すように言っておいてくれ。じゃあな!」  彼らに向かって伝言を伝えると、面倒臭そうな足取りでバイト先へと向かった。彼が姿を消すとそこにいた誰もが口をポカーンと空けたまま呆然としたのだった。  

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