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─輪─

「こっ、こんな所に俺を呼び出しておいて一体、何の用だよ…――?」 そう言って俯いて話すとあいつはニヤケた表情で話しかけてきた。 「何だよ慶ちゃん、怒ってるの? 連れないな。俺達『友達』なのに酷いな――」 「ッ…――!? 誰がお前といつ『友達』になったんだ!」 「そんなの前からに決まってるじゃんか。悠真の友達は俺の友達。そうだろ?」 「真樹…――!」 あいつのその言葉に奥歯をギリッと噛んだ。真樹は俺が一番嫌いなタイプだった。そう、あの時も飄々(ひょうひょう)とした態度でいた。コイツはそういう感じの人間だったのを思い出した。俺は溜まらずに席を立とうとした。 「天野帰るのか? 本当に帰るのか? いいの、アレが欲しくてきたんだろ?」 「っ……!?」 その言葉に胸の奥がザワザワしてきた。そして、喉の奥が急に渇いた。あいつはそう言ってニヤケた顔で俺を見透かして笑った。一旦冷静に戻ると再び椅子に座って腰を降ろした。 「そうそう慶ちゃん、お利口さん。それにしてもこのハンドルを回す感覚はいつ握ってもいいね。それにパチンコの玉が出るこの音が良い。そして当たればもっと、最高の気分だ。これぞまさに『ギャンブル』してるって感覚だな!」  その言葉にビクッと身体が反応した。あいつがまた隣でニヤケた顔で見てきた。まるで俺を嘲笑ってるかのように見えてくる。真樹は、タバコを口に一本咥えるとそのままライターで火をつけて一服した。  

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