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─見返り─
冷たい雨の中、元気無さそうな顔で下を俯いて黙ったままの父が不意に隣で呟いた。
「なあ、克哉。悠真は、悠真は本当に……」
『父さんっ!!』
その言いかけた言葉を遮るように突如、声を上げた。
「――やめよう、そう言うのは言わない約束だろ? 何より、母さんが一番悠真のことを心配しているんだ。だからそんなこと言わないで……!」
「すまない。だけどこのままじゃ、私達にはどうする事もできない。やはり警察に…――」
「父さん、警察は……! 警察は当てには――!」
克哉はそう言いかけた時、誰かの視線に不意に気がついた。すぐ近くに、赤い傘を差した女性がいた。彼女は二人の方をジッと見つめると克哉の視線に気がついて、其処から慌てて立ち去った。彼は彼女に気がつくと呟いた。
「あの子…――?」
その時、彼の中で何かを思い出したのだった。
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