いきなり暴力を振るわれると、悠真は押し付けられたテーブルの上で足掻いた。ナギは彼の耳元で囁いた。 『あぐっ……！！』 「――ああ、そうだね。キミが可愛い仔猫みたいに私に懐かないのは解ってるよ。でもね、キミに嫌われるほど私はキミの事が『愛しくて』仕方ないんだよ。だからね、少しずつ飼い慣らしてあげる。そうして行くうちに私に段々と懐いて行くのが目に浮かぶよ」 「っ……！　このイカれ野郎がっ！！」 　悠真はテーブルの上で額を擦り切ると、怒りで体を震わせた。そして、改めてこの男がイカれている事を確信した。ナギは彼の頭から手を離すと再び仕切り直した。 「さあ、食事をした前。それとも食べずに、私に暴力を振るわれる方が良いかな――？」 　そう言ってナギは彼を脅すと強引に食べる事を進めた。悠真は今にもキレそうな気持ちをグッと堪えると、ナイフとフォークを両手に持って無言で食べ始めた。 ――この野郎、今に見てろ……！ 悠真はそこで怒りを込み上げると、頭の中で目の前にいる男を何度もぶん殴る姿を想像しながら、ムシャムシャと無言でハンバーグを食べた。ナギは彼の怒りも知らずに。ただジっと見つめると、クスッと微小を浮かべた。