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─見返り─

 出されたハンバーグも一度も味わう事も無く、怒りに身を任せて全部平らげた。そして、持っていたナイフとフォークをお皿の上に放り投げた。   「――ほら、言われた通りに食べてやった。これで満足か?」    悠真は無理やり食事を胃袋に流し込むとそこでナギを睨み付けた。彼は仮面の下でクスっと笑うとそのまま空になったお皿を片付けた。そして、テーブルの上を綺麗に片付けると悠真にワインを飲むのを進めた。 「おや、悠真。赤ワインは口には合わなかったのか? まだグラスに残っているじゃないか。キミの為に食事に合うワインをわざわざ選んだのに、お気に召さなかったのかい?」 「…――ッ! うるせぇよ、どうせ酒に酔わせたら俺に変なことをする気だろ? 何せあんたは変態のホモ野郎だからな……!」 「おや、悠真それは私の事を誘っているのか? ああ、それとも自ら自分でそうなるのを望んでるのか?」 「ハッ、バカじゃねーの。本気でそう思っているならアンタは本物のホモ野郎だな」  彼のその言葉に悠真は悪態をつくと、その場であきれたように言い返した。ナギは食べた食器を全部ワゴンに乗せると、赤い薔薇が入った花瓶をベッドの脇に置いた。  

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