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─見返り─

「どうだい悠真。薔薇の花があるだけでも、この殺風景な部屋に色が映えると思わないか?」 「それで俺の機嫌をとったつもりかよ?」 悠真は皮肉混じりに言い返すと溜め息をついた。ナギは彼を無視すると、ワゴンを引いて部屋から出て行こうとした。すると悠真は突然、彼に話を切り出した。 「おい、待てよ。自分の世界に入るのは構わないが俺の事は無視か? 誰だかわからないテメェに無理やり監禁された俺の身にもなれよ。このクソつまらねー部屋にずっと閉じ込められて俺は死ぬほど退屈してるんだよ。ましてや部屋の中には、何一つ娯楽なんて無いからな。こっちは我慢してやってるんだ。俺が言いたい事ぐらいわかるよな?」  突然その話を切り出すと、彼に直球で見返りを求めた。 「見返りが欲しい、テレビかラジオをよこせ!」 そう言ってストレートに欲しい物を伝えると椅子から立ち上がって、ナギの方を黙ってジッと見つめた。彼はドアの前でゆっくりと後ろを振り返ると一言応えた。 「――なるほど、君は私に見返りを求めるのか?」 「ああ……!」 「そう、それなら一つ考えてもいいぞ?」 「当然だろ。人のことを監禁した上に好きだの愛してるだのほざくなら、それくらいしてくれたっていいだろ。それともあれは全部、嘘か?」  彼がそう言うと、ナギは仮面の下でクククッと笑った。そしてワゴンから離れるとワインの瓶とグラスを片手に持って静かに歩み寄った。  

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