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─見返り─
ナギは目の前のテーブルの椅子に座ると、再びグラスに赤ワインを注いだ。そしてグラスを手の平で優雅に揺らしながら彼に話した。
「つまりキミは私に見返りを求めるのか? それなら望みを聞いてあげても構わないが。そうなると私もキミから見返りが欲しい。お互いにフェアじゃないとつまらないだろ?」
「俺にそれをアンタが言うのかよ?」
「悠真、この世には平等なんてものは無いんだ。それはあっても幻想だよ。常に不平等が蔓延しているのがこの世界の本来の姿なんだ。それはこの瞬間も常に不平等で同じさ。ほら、今だってそうだろ?」
「うんちくはウンザリだ。あんたの望みは何だ。さっさと言えよ」
二人はテーブルで向かい合うと、互いに無言で視線を交わした。するとナギは彼にワイングラスをスッと差し出した。悠真は目の前に差し出されたワイングラスを手に持つとグイッと一気に飲み干した。グラスをテーブルに置くと、またそこにワインが注がれた。悠真はナギの方を無言で睨みつけると、ワインを一気に飲み干した。そして、ドンとテーブルの上に置いた。
「良い飲みっぷりだね、悠真。そうでなくちゃ、面白くない。さあ、どんどん飲みなさい」
「っ……!」
彼は仮面の下でククッと笑いながら、ワインをどんどん勧めて飲ませた。そして、酔いが回ると悠真は頭を片手で押さえでテーブルの上にガクンと姿勢を崩した。
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