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―現在―(克哉side)

玄関で靴を脱ぐとリンの足を拭いて、先に風呂場へと行かせた。廊下を通ると、リビングから賑やかなテレビの音が聞こえた。閉まっていたドアを開けて中を覗くと父が白いソファーに座りながらテレビを観て寛いでいた。 「あ、父さん。リンの散歩行ってきたよ?」 「克哉すまない。助かるよ」 「別に良いって。それよりさっき散歩してたら、赤い傘を差した女性に会ったんだ。その人どっかで見たことがある気がするんだ……」 「どんな子だい? お前の知り合いか?」 「いや、俺の知り合いにあんな子は居ない」 「そうかい。じゃあ、悠真の知り合いかな?」 父のその言葉に一瞬、ある事を急に思い出した。慌ててリビングを出ると弟の部屋に入って本棚を見て調べた。そして、クローゼットの中を開けるとアルバムを探した。 「確か、きっとあの子だ……!」 クローゼットの奥から古いアルバムを見つけた。そこで息を呑むと、弟の小学校の卒業アルバムを手に持ってページを捲った。そして、集合写真を探して見つけた。悠真が写ってる集合写真に赤い傘を差していた女性に似た女の子を見つけた。 少し雰囲気は変わったけど、眼鏡を掛けていたら写真の女の子にソックリだった。そう言えば昔、弟が風邪で寝込んで学校を休んだ時にうちに眼鏡を掛けた女の子がプリントを渡しに来たのを思い出した。 「やっぱり…――」  赤い傘を差した女性を見た時に、何処かで見たような気がしていたが、これでようやくハッキリとした。  あの子は悠真のクラスメイトだった。弟の卒業アルバムから写真を1枚抜き取ると、クローゼットに再びアルバムを仕舞って部屋を後にした。  ずいぶん昔なのに、あの時の事を一瞬で思い出した。あの日は学校が早く終わって家に帰ると、家の門の前に赤いランドセルを背負った女の子が一人で佇んでいた。彼女は俺の方を見ると、一言会話をして俯いたままの顔でプリントを手渡してきた。そして、慌てた様子で家に帰って行った。その時の印象が僅かに残っていた。 「キミは一体、誰なんだ……?」 写真を手に取ると不意に呟いた。悠真を探す中で彼女の登場は、俺の遠い記憶を呼び覚ました――。  

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