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目が覚めたら……。

「――さて、悠真君。どうする? 警察にでも通報するかい? 遠慮せずにどうぞ。もしかしたら、これが最後のチャンスかもしれないよ?」 犯人は電話越しで挑発してきた。混乱してる俺の様子を電話越しで笑ってるようにも見えた。その事が頭に浮かぶと急に腹ただしくなった。確かにこれはチャンスかもしれない。 いや、ラストチャンスかも――。  もしかしたら俺はイカれてるコイツに殺されるかもしれない。しかし、そんな簡単に警察に通報してもいいのだろうか? もしかしたらこれは、犯人の罠かもしれないのに……。  恐怖心で研ぎ澄まされた緊張が一気にピークに達すると携帯電話を片手に、口元の震えが止まらなかった。歯はカチカチと震えて、止まる気配はなかった。 電話をかけて通報するか? それとも通報するのを躊躇うか? 頭の中で2つの選択肢がせめぎ合った。しかし通報しなければ自分は助からない。むしろここから早く脱出しなければと、鬼気迫るものも感じた。 「悠真君どうする? 警察に通報しないと助からないかもよ。いいんだよ、かけても。でも、その選択肢は本当に正しい事なのかな? 自分の命がかかってるんだよ。よーく考えてごらん」 『う、うるさいっ!!』 「フフフ。じゃあ私は一旦、退散する事にする」 そう言って電話越しで笑って話すと、そこで男は通話を切った。 『クソッ、ちくしょうっ!!』 男との通話が切れると俺は閉じ込められた箱の中で頭をかかえた。完全に犯人の方が有利に立っていた。何せこのイカれた『ゲーム』の首謀者は奴だから。  俺はわけもわからないまま、無理やり箱の中に閉じ込められた哀れな男でしかない。しかも犯人の狙いも顔も名前も誰かもわからない。 唯一分かっていることは、あの日の夜に俺はどこかでこの男と知り合ったくらいだ。でもその記憶がまったくない。 まるで頭の中を消されたみたいに記憶が抜け落ちている。そして、この男はサイコ野郎で俺の事を憎んでいる。それだけでも嫌な気分だった。 困惑して頭を抱え込むと無言で目を閉じてた。  俺は一体、どうすればいい?   このままでは、犯人の思う壺だ!   とにかく冷静になって考えろ!  緊迫感に煽られながらも頭の中で解決の糸口を探そうとした。  奴は俺が警察に通報しないと思っている。その自信は一体どこから来るんだ? 幸い携帯は今、自分の手もとにある。俺が警察に通報すればこの悪趣味なゲームを終わらせれる。一体、なにを迷っている?   自分の命が危ないと言うのに。もしかしたら、これがホントに、ラストチャンスかもしれないんだぞ!?  今通報しなければ、俺の命の保障なんてものはない。むしろ絶望的だ。何せこの狭い箱の中から出られないんだから――。  俺はそう思うと自分のこの状況に絶望視した。  冗談じゃない!  こんな所でくたばってたまるか!  俺は何ともしても生きるんだ!    そんで俺を連れ拐った奴をぶちのめしてやる!   そこで気持ちが一気に高まると、持っている携帯電話を握りしめて、警察に通報する事を決めた。 もしかしたらこれは犯人の『罠』かもしれない。ましてや、俺のことを犯人がわざと試しているのかもしれない。  でも、そんな事なんて関係ない!  自分の本能に従え!  何も恐れることはない!  俺は俺なんだから――! 恐怖心に怯える心を勇気で奮い起たせると、俺はついに行動に出た。そして、携帯を右手で操ると番号を入力して警察にかけた。

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