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支配者

 食べないとまた『同じ目』に遭う。それが彼の脳裏に過った。悠真はスプーンを右手に持つと、ゴクンと息を呑んだのだった。目の前で食べる事を要求されると、疲れきった表情でスプーンを手にして口に運んだ。 食欲がわいてこない状況の中で無理やりスープを口にした。だけどあの男が作った料理となると、決して油断できない。スープを一口飲む事に確認せずにはいられなかった。 味は普通のスープだった。そして、何か混入してそうな気配はしなかった。悠真は黙ってスープを全部食べ終わると、そこで握っていたスプーンをカランとお皿の中に落とした。 「……気は済んだかよ? 俺を十分いたぶって満足しただろ。だったらいい加減、家に帰させろ!」 悠真はそう言って仮面の男に言い放った。すると男は一言ダメだと口にした。 「言っただろ、キミは私のカナリヤだって。ここはキミを閉じ込める檻だ。そして、キミは私だけの小鳥になるのだ。誰もいない2人だけの世界でキミだけを永遠に愛してあげるよ……」  仮面の男はそう言って答えると、食べ終わったお皿を片付け始めた。悠真は無言で睨みつけた。 「さてと、ようやく2人だけの世界になった所でキミには改めて話しておこう。私はキミの全てを支配できる。そうだな『支配者』といえば分かりやすいかな? だから無駄に抵抗とか、私に噛みつくような真似はしない方がキミの為だと言っておこう。その焼かれた背中の傷みたいにまた私に酷いことをされたら嫌だろ?」 「っ……!」  

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